「祭り」で爆発したろ
自分にとっては、ショパンのエチュードって「禁断の曲」だった。
ネットでピアノ曲の難易度とかがわかってくると、ああ、そげなおっそろしくむずかしい曲は、ウカツに手を出したらあかんと思てた。
それに、私はバッハやベートーベン、シューベルトがとくに好きなんで、ぜったいショパンを弾きたいというわけでもなかった。
だのに、今回いきなりショパンのエチュードをやり出すっつー「祭り」をはじめたのはなんでだろ?
だいたい今年に入ってから練習していたのは、ハノン1番だけである。ホント、それだけ。しかもそれすらぜんぶ弾けへんありさま。
そこで思い当たるのは「マグマ」の存在である。
3月はじめごろから、ココロの奥底で熱くたぎっているナニモノかである。
もっとも過去記事を読み返してみると、そのマグマが活動するまえには、仕事で大チョンボをやらかしていた。
とすると、その失敗がマグマを大いに刺激したとも考えられなくない。
ふうん、「人生、必要なことしか起こらない」と年がら年中カウンセラー先生が言うとるけど、ホンマやね。
結果的に、そのマグマは噴火寸前でワシをあおりよる。
だもんで、うおお、ピアノ弾かなー、いやもうそんなら、大学も行ったろかー、もうなんでもいてこましたるでー、となってもうたが、この錯乱状態にぴったりの曲が、ショパンエチュードOp.10-4なんだよね。
あの曲さあ、おしまいのほうで盛大に爆発しよるやろ?
あの大爆発をぶちカマしたいから、すっっごく弾きたいんスよ。弾けへんけど。
そう、弾けへんわあ……さすがに、むつかしすぎるわ。
プロの演奏が新幹線やったら、ワシ、赤ンボのハイハイぐらいやで。
一音一音よったよった出しとるけど、え? これ、ノクターンやったっけ?
それでも、今日は何十分かかったか知らんけど、とうとう最後まで弾きましたぜ。
で、つくづく思たけど、こないしてヒイヒイ言いながらでも、弾きたい曲弾くのはやっぱりエエなあ。
あまりに弾けへんから、ぜんっぜん楽しいことあらへんけど、なんか感無量で涙出てきた。
鼻水たらしながら、ああ、べつにな、自分に「禁止」するモンなんてなにひとつないんやなと思った。
ただ「すなお」になったらいいだけ。
弾きたい曲は弾く。弾けなくても弾く。
大学行きたかったら受験する。受からなくても受験しつづける。
せっかく「この世」につかの間滞在さしてもろてるんやから、行きたいアトラクションはぜんぶ行っとくだけのハナシ。