44年ぶりのピアノレッスンがこんなことになるとは!

先日、44年ぶりにピアノのレッスンを受けに行った。
しかし、先生のお宅にうかがうまでも、怖くてしかたなかった。

私は、YouTubeで先生の演奏にひどく感動して、それでどうしてもこのかたに師事したいと切望したのだけど、それほどすごい演奏をされるひとだし、経歴や門下生のひとたちの活躍ぶりも、私にとっては目がくらむような存在だった。

先生のご自宅は、電車を乗りついで2時間半ほどかかるところにある。何度か乗り換えて、とちゅうふと、ああ、どこか線路が流出したりして不通だったらいいのにと思った。
いや大雨どころか、雲ひとつない青空のもと桜が舞っており、山越えする箇所では、電車を降りて歩き回りたくなるほど春の陽気が満ちていた。

最寄り駅にはずいぶん早く到着した。約束の時刻まで小一時間ほどあったので、近くにある店を順番に出たり入ったり、トイレも2回入ったり、落ち着かないことこのうえない。
先生のご自宅を確認してからも、遠回りに行ったり来たり、不審者そのものになっちまう。

あまり早くうかがっても失礼かもしれないので、定刻の30秒まえに、息を止めてインターホンを押した。この時点で、もう死にそう。

それで……
じつはタイヘン申し訳ない。このブログの読者さんにお詫びします。

やっぱりくわしいお話は、とても公開できないんだ。
私としてもぜひ書きたいんだけど、先生との深いお話はやはり内密にすべきことなのだ。

非常におこがましいが、私が想像していた以上に、先生はたいへん真摯で思慮深く「高潔」ということばがお似合いのかただった。
「先生として指導する」といったことからは遠く離れたかただった。

ただ「音楽」に対して、尊崇の念をいだいておられるだけではないか、と僭越なのだが、そうとしか思えなかった。

そんな先生のまえで、私はショパンエチュードOp.10-4を弾いてしまった。いや、ぜんぜん弾けてないけど。
何度もつっかかりどん詰まり、大崩壊しつつ、もはや自分がなにをやっているのかわからず意識がぶっ飛んだころ、終わった。

先生は、少し間をおいて、しずかに「いかがでしたか?」と言われた。
私は「……ボロボロですね。すみません」と答えた。

すると先生は、「むかしやったことは手の中に残っていると感じられましたか?」と尋ねられた。
ああ、それは少しあるかもしれないと私は思った。

高校生のころ、私はもう就職することになっていたし、ふてくされてて、ヒマで、でもFMラジオでショパンエチュードってカッコエエなあと思って、遊びで弾いていた。
おしまいのほうで盛大にバンバンやるのが気分爽快で、ソコばっかり弾いていたので、そう、ソコの左手の跳躍はいまでもまあ弾ける。カラダが覚えている。

なんかそのころの鬱屈した気もちが一挙に噴出してきて、なんじゃ、そのウサ晴らしに10-4ばっかし弾いとったんか!といまごろ気がついた。

それで? いまだに高卒のコンプレックスを抱えていて、ええーっ?! それで、いままた音大に行きたいって、オマエはなんちゅうガキやねんと往復ビンタでも食らわしたくなった。
私はホントにピアノを弾きたいのかねえ? ソレ、道具にしとらん? いやわからん。でも憑りつかれたかのようにピアノは弾きたい。

しばらく無言だった私に、先生はいくつかのことばをかけてくださった。
すまん、それはちょっと書けない。でも、私にとっては心外でうれしいことばだった。

そして、これからのおおまかな予定を話してくださったあと、次のレッスンまでの課題を示してくれた。

・ハノン 1番
・ツェルニー30番の18番
・バッハ インベンション 2,4,9,11,13のうち、どれか1曲

それから、ハノン1番の弾きかたを非常にくわしくていねいに教えてくださった。
それは、比喩やイメージに満ちた説明で、これまで見たことも聞いたこともない弾きかただった。

そしてその通りにしたがって、じっさいに弾いてみると、これまでとはまったくちがう豊かな音がふわぁっと広がった!
自分が出している音とはにわかに信じられないような響きだった。
はああ、これがピアノの音色なのか!と生まれてはじめてわかった瞬間だった。

先生のおうちをあとにしてからも、私はなにが起こったのかわけがわからずぼーっとしつづけていた。
歩いていても電車に乗っても、どこにいるのかわからない。乗り継ぎはなんとかできたが、最後、自分ちのある駅を乗り過ごしてしまった。

ああ、この感じ、似ている。
そう、カウンセリングとすごく似ている。

そのひととのあいだで、潜在意識レベルのやりとりのほうが、顕在意識よりはるかに活性化していて、その衝撃でフラフラなんだよね。

ああ、すごいかたに出会ってしまったね。
もう大学はどっちでもいいかな?
いやいや、先生は入試にピシッとフォーカスしてくださっているというのに、それはないだろ?

もうコンプレックスだろうがなんだろうが、このトシなんだからなんでもいい。
私はやっぱり某芸術大学に行きたい。
そこに入学して、この先生にずっと教えてもらいたい。

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