妹の認知症疑い、最終的な診断結果をふたりで訊きに行く

いつものごとく寝坊してね。あわてて用意してクルマに乗り込み、極力がんばって高速をすっ飛ばし、てか3車線もある高速走るのは何年ぶりかなあ。ピアノのレッスンに行くときはド田舎高速で片側一車線の対面通行ばっかりなんだ。都会の高速は分岐のたびに冷や汗をかく。なんとか病院にたどり着いたが5分ほど遅刻してしまった。

こんなババアになると走るなんて不可能なので、ゆっくりちんたら歩いて病院の中の再来受付機を探した。そこを待ち合わせ場所にしていたのだが、再来機のそばには黒いワンピース姿のほっそりとしたおねーさんしか見当たらない。

あれ、約束の10時半は過ぎているのに妹はまだ来ていないのかな?とアタマをかしげていたら、そのすらりとしたおねーさんがニコニコしながら私に近づいてきた。

ありゃまあ、なんと彼女が妹だった。私は思わず「え? ど、どうしたのっ?! どうしてそんなにやせたんだっ?!」と叫ぶ。だって妹はかつてたいへんデブ恰幅のよい体型だったからだ。


妹「う~ん、やせたんだよ。ストレスがなくなったらね、やせたんだ」
私「し、信じられないっ! さっき見かけたときちがうヒトだと思った。でもいまは本当に細くてキレイだねえ。髪も伸ばしてるんだ。すごく色っぽい」

髪の毛は肩よりちょっと下まであるそうで、それをきれいに結い上げてしゃれたバレッタで止めてある。両耳には合計5つのピアスが輝いている。私はきれいなうなじに目が釘付けになってしまった。

もともと妹は童顔であるし、しかもかわいらしい顔立ちなので前から若く見られがちであり、二十代ぐらいのときは中学生にまちがえられたりしていた。いまほっそりとした体になり、それでも張りのある肌を保っているので、じっさいは54才であるというのにせいぜい四十ぐらいにしか見えない。


「いったいどのぐらい体重落としたの?」
「64kgあったんだけどね。46kgまで減ったよ。いまはもう少し増えたかな」
「う~ん、ものすごくきれいになったね。それにセクシーだ」
「失恋してきれいになったってのも複雑だなあ」

診察までは小一時間あったので妹の就活についていろいろ話を聞いていた。派遣会社には7社も登録していて、そのうち1社がとても積極的に提案してくれて、いくつかいい話をもらっているらしい。

さてそのうち診察に呼ばれた。認知症の専門で有名な医師の診察である。今日は最終的な診断結果を聞くことになっているが、妹はこれまですでに合計3回も検査のために来院していたという。MRIももちろん撮ったし、SPECT(脳の血流測定)もやったらしい。SPECTについては、以前も認知症疑いで別の病院で調べていたということで、その病院から過去のデータも取り寄せてくれているそうだ。臨床心理士による心理検査も入念に4時間ほど受けていた。


ひさしぶりに妹と話がはずんで、いったいなんのために病院に来たのか忘れそうになったが、そうそうこれがいっちゃん肝心だよねとふたりで診察室に入る。妹が主治医にあいさつし、そして「姉です。よろしくお願いします」と付け加えてくれた。

お医者さんは開口一番「認知機能にはなにも問題はありません」と告げた。そしてつぎにMRI画像をていねいに見せてくれながら「こちらもなにも異常はありません。海馬(記憶を司る部位)もしっかりしています」さらに、SPECTの画像も順々に示しながら「やはり異常は見られません」と言われる。

お医者さん「つまり脳に器質的な異常は見られないのです。認知症ではありません。したがって今後は解離性障害などについて対応を考えていくことになりますね」
妹はいま現在そのナントカ障害のたぐいを3つも抱えている。「双極性障害、発達障害、解離性障害」の3つだ。

しかしお医者さんは「このごろお酒はどうですか?」と妹に尋ねる。
「500ミリリットル3缶ぐらいですね」
お医者さん「私もヒトのことは言えないんですが、3缶はちょっと多いでしょうか」
妹「はい、減らすように努力します」


ということであっけなく診察は終わった。私としては、妹の脳ミソに器質的な異常が見られなかったので、やれやれよかったとほっとしていたが、妹はとくに安心したそぶりは見せなかった。

ブログでたびたび書いているが、私自身も物忘れがひどい。なので去年の秋、私もある精神病院で認知症の検査をひと通り受けた。そして今日の妹とまったく同じく「脳に異常は見られません。心理検査の結果でも認知機能に問題はありません。認知症ではないですね」という結果になった。

しかし、精神科医から「認知症ではない」というお墨付きをもらっても、現実には物忘れがひどくてパート先で周りのヒトがたいへん迷惑をしている。妹も状況がよく似ていて、職場でミスが多くて迷惑をかけていたり、そして元彼から「話をぜんぜん覚えていない」と何度も指摘されたという。

それで今回の一連の病院通いに至ったわけなのだが、そうか、妹も脳に器質的な異常はないと確定したんだな。そうするとこれからはナントカ障害をなんとかしないといけないわけだが、あともうひとつ病気が加わっていて、それは視力の低下らしい。右目が矯正してもほとんど見えないという。


それが原因でいまの職場を退職する予定であり、次の仕事を探している最中だ。診察が終わったあとは就活についてふたたびいろいろと話し合った。

しかしとちゅうでやっぱり男の話に花が咲いた。いっしょに話をしていると楽しいので、場所を変えながら夕方まで話し込んでいたけど、結局話の7割は男だったかな。ある男に1700万円も貢ぐことになったいいきさつとかもくわしく聞いてほとほと感心した。

「早くつぎの男を探したいな。就活が終わったらすぐにアプリで探すつもりだよ」と妹はやる気(なんの?)満々である。妹の男談義を延々と聞かされていたら、すっかり鎮火していたはずなのに私もその気になってきた。そうすると妹もアオる一方で、具体的な「粉のかけかた」とか非常にくわしく教えてくれた。

そして、よしお互いがんばろうね!と励ましあって別れた。われわれはいったい、今日なんのために落ち合ったんだっけ?

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