高齢者施設スタッフの残酷な仕打ち?│7年ぶりに89歳の母に電話をかけたら│その4(最終回)

日々のあれこれ

母の話は、まだまだつづいた。

「ここの施設の費用はね、高くてね、年金はちっとも残らないの。

でも、お風呂に入れてもらえるのが助かるわ。

それも、一人ずつ毎回お湯を替えてもらえて、それがうれしいの。

お風呂は気もちいいわ」

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「去年1月はね、圧迫骨折になって、3ヵ月間寝たきりだったの」

えーっ?! そ、そんなっ?!

……と、私が少し話そうとしかけても、母が立て続けに話すので、そのスキがない。

そんなに急に、気を高ぶらせて話をして、身体に障らないだろうか?

「一昨年12月末に、腰が痛くて歩けなくなったのよ。

もうガマンできないほどの痛みで。

でも、施設のヒトに言っても、なかなか病院に連れて行ってもらえなくて。

もうしょうがないから、とうとう『じゃあ、私、救急車を呼びます!』って言ったら、やっと連れて行ってくれて。

そしたら、背骨の圧迫骨折だったの」

……う…わ…、家族に頼れないと、そんな目に会うのか。

いやいや、ものすごい罪悪感に襲われる。

「退院して、施設に帰っても、ずーっと歩けなくてね。

ベッドのすぐ横のモノも取れないし、トイレも行けない。

それで、ぜんぶコールして、施設のヒトに来てもらってたら、あとですごい金額になったの。

そういうの、介護保険外になるから、全部で50万以上も請求されて。

毎月の決まった費用以外に、それだけかかって、もう貯金がゴッソリ減って。

これからは、絶対病気できないって思ったわ」

いやいやいや、それは……もしかすると「介護度の区分」を変更して、もう少しなんとかなったんじゃないか?

いや、私はまったく介護保険のことを知らないから、憶測にすぎないけど。




「あとね、お葬式の費用はだいじょうぶよ。

私、ちゃんと積み立ててあるの。

心配しないでね」

そ、そんな……

「前は、本を読むのが楽しみだったけど、もう目が疲れるから読めなくなったの。

でも、新しいラジオ買ったのよ。

それね、CDもかけられるラジオなの。

ヨドバシカメラに電話して買ったの。

すごくいいラジオだから、いつか春ちゃんが来たら、そのラジオ、見てね」

……も、もう、あまりに母が哀れで、涙が止まらない。

まだまだ話したそうな様子だったが、きっと疲れるだろうから、今夜はいったんおしまいにして電話を切った。

なんというか、「あどけない子どもを見捨ててしまった母」のような気もちだった。




現に、母の実母は、母が6歳のときに家出をしてしまった。

ほんとに完全に見捨てられているのだ。

それなのにね、我が子にまで見捨てられてね。

なんと哀れな人生なのか。

そして、その加害者が私であるという事実。

一瞬、私は全力をかけて、母に償わねばならない、と思いかけた。

が、しかし。

いやいや、母の人生は大切だが、私の人生も大切だ。

私は私で、やりたいことがある。

そのひとつはピアノ。

そういうことを犠牲にすることなく、母によろこんでもらえるよう、いろいろ画策しようと思う。

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