カウンセラーTさんは、ズームで話しはじめてから10分もたつかたたないかのうちに、「私だったら春子さんにカウンセリングしてもらおうとはぜんぜん思わないわ」とバッサリ言い切った。
Tさんは、以前あるセミナーでご縁のあったカウンセラーだ。このかたは民間会社でのカウンセラー歴が長い。私はどちらかというと、ネットで偶然見つけたカウンセラーのヒトたちのほうがなじみがある。
根本裕幸さんも大塚あやこさんも、検索でたまたまそのかたたちのブログを見つけて、記事を読みあさっているうちにセミナーに通うことになった。ところがTさんは、ふつうに就職してカウンセリングをやっているかただった。
私は、自分があまりにもカウンセリングの勉強がはかどらないので、どうしたものかとズームでTさんと話をした。これはべつに、私がTさんのカウンセリングを受けるというわけではなく、ちょっとした雑談ていどだった。
ところが最初に書いたとおり、Tさんは、私にカウンセリングなんか受けたくないとズケズケ本音を言ってくれた。さすがに私も仰天して、
「えっ?! どうしてですか? その理由をぜひ知りたいです」
Tさん「だって、春子さんはあまりにもちがいすぎるから」
「はあ」
「ふつうのヒトがふつうに相談したいとは思わないわよ。春子さん、たとえば芸能人の話とかわからないでしょう?」
「た、たしかに。テレビ持ってませんからね。でも、Tさんはどうしてそんなことがわかるのですか?」
「みんなもわかるわよ。すぐ感じるものよ。春子さんはふつうのヒトとはぜんぜんちがう空間にいるヒトだってすぐわかる。そしたら、ふつうのヒトはそういう変わったヒトに自分の話を聞いてもらいたいとは思わない」
なるほど、そのとおりだね。あまりにも説得力がありすぎて、衝撃でしばらく呆然としていた。
Tさん「たぶん春子さんは、心理学に興味があっても、相談者さんそのヒトには興味が持てないんだと思うわ。だから相談者さんの話を忘れてしまうのよ。でもべつにそれが悪いわけじゃない。カウンセラーに向いていないだけよ」
「はあ、まあ、それもそのとおりですね」
「いまのパートで物忘れがヒドいのも、きっと関心がないからだと思うわ」
「はあはあ」
「春子さんは、なにか専門職とかのほうが向いてるんじゃない?」
はあ。また出たな、専門職。去年物忘れ外来を受診したとき、精神科医の先生に専門職を強くすすめられた。
私はにわかに謙虚になった。だいたい専門職がいったいなんなのかよくわかっていないけれども、これほどいろいろなヒトに向いているとすすめられるんだから、もしかすると私は本当に専門職が合うのかもしれない。少なくとも接客業よりは。
さて自分では、その専門職っぽいものとしてカウンセラーをめざすことにしたのだが、どうやらカウンセラーは向いていないようだね。
でもTさんは「きっと春子さんの能力を活かせるなにかの仕事があるはずよ。それはハローワークでは見つからなさそうね。春子さん自身が自分で探すものね」
私はふとこう言った。「あのう、私ってそんなにユニークなんですか?」
Tさんは「そうよ、ものすごく個性的だわ。でもだからこそできるなにかがあるはずよ」と首をブンブン振った。
へええ、はああ、そうですかあ?
まあそりゃ自分が非常に変人だという自覚はあったけれども、変人だからこそなにかめずらしい職業を探すべきだとは思い至らなかった。
努力すればふつうにパート勤めができるはずだとずっと信じていた。しかしどうやら、ふつうのヒトならばふつうのパートをそれほど努力せずにできるものであっても、変人がふつうのパートをこなそうとしたらどれほど努力しても適応できないようだ。
職業の向き不向きについては、Tさんの話は精神科のお医者さんとたいへんよく似通っていた。そういえば病院の臨床心理士のヒトも専門職一押しだった。
うむむ、やはりまた仕事の適性を検討しないといけないのか? どうも専門職と聞くとあまりいい気もちがしないのだが、おそらくそこには学歴コンプレックスが根強くある。けれどもそもそも学歴の価値観というものは親に植え付けられたものだ。いまさらそんなものにこだわる必要はない。
まあみなさん、専門職をエラくすすめるが、そこはつまり「専門職の要素のなにが、自分に向いているか?」ということだろうね。
差し当たり「ひとりでマイペースでできること」だろうなあ。とにかく、ヒトとの会話に苦労するのでそれがなくなるだけでもすごく助かる。時間に追われるのもダメだから、「無期限でできるなにか」がうれしいけど、ええと、そんな仕事って果たして実在するのだろうか?
けれども、Tさんがバッサバッサ快刀をふるってくれたので、いやホントめった切りにされたから、おいおい考えていくことにする。Tさん「でも、せっかくだからカウンセラー養成講座は最後まで通ってね。ムダにしないように。それは春子さん次第よ」
は、はいっ。がんばるっス!