マンガはちっとも知らなくて、かろうじて萩尾望都ぐらいかな。
中学1年のとき、同じクラスにマンガがうまい女の子がいて、その子を中心に数人がマンガの話ばっかりしていた。
その女の子、Y子ちゃんはマンガがズバ抜けてうまくて、雑誌に投稿して入選とかしてたなあ。みんなでスクリーントーン貼りとかベタ塗りとかお手伝いしてね。
Y子ちゃんはアタマもよくて、中1の終わりにもなると、もう「マザー・グース」を原書で読んで童謡を英語で歌える子。ハンプティダンプティの歌、教えてもらったな。でも、いったいなぜおんなじ英語の授業を受けているのに、さっぱりわからん子(私)が大半で、デキる子はなんでもスルスルデキるんだか。
そのY子ちゃんが常識のようにいつも話していたのが、萩尾望都だったので、私も貸してもらって「ポーの一族」とか読んだ。
「ポーの一族」でも中1じゃむずかしいでしょ? それが「トーマの心臓」ともなると、あたしゃさっぱりわからなくて。純文学みたいで、これのなにのどこがいいんだか当時はまったくわからなかった。
いまは「トーマの心臓」もだいじょうぶ。すごくいい。還暦前にしてようやくY子ちゃんに追いついた。
▼で、たまたま今日は、萩尾望都の「フラワー・フェスティバル」を読み直した。
萩尾望都のバレエ物のうち、いちばんはじめのがこの「フラワー・フェスティバル」。このころの絵柄もきれいねえ。一コマ一コマうっとり。
バレリーナを目指す高校生・みどりが主人公。若者たちが競い合うんだけど、そこは萩尾望都だから、単なる競争というよりそれぞれの個性とか成長を描いている。萩尾望都は、ほんっとストーリーも絵もすごいねえ。これだけのキャラクターがよくもまあ生き生きと。
クライマックスは、ある舞台なのだが、マンガなのに音楽まで聞こえてくるかのようで、目の前でリアルなバレエがありありと見えるかのよう、あんまりすごくて泣けてしまった。いやあ、舞台の迫力がすごくてマンガで泣いたなんて生まれてはじめて。
「フラワー・フェスティバル」は、以前にも何度か読んでいるんだけど、そうそう、ピアノと重なるところがやっぱりあってさ、練習がんばってー、テクニックがー、表現がー、個性を活かしてー、本番がーってのが、前とはぜんぜんちがって響きましたな。
で、バレエマンガだと、お約束の「主役はだれがっ?!」みたいなドラマになって、すごくおもしろいんだけど、そこでハタと気がついたんだ。
そういえば、ピアノってふつうはひとりで弾くから、みんな全員主役なんだなって!
バレエだとこんなに大騒ぎして主役がどーのこーのを繰り広げるのに、ピアノって楽器はのっけから主役がばーんと決まってるなんて!
ねええ、数分間ぜったい主役なんだわさ。すっげえ。
てか、恐いわー。
恐いといいながら弾きたいんだから超矛盾してるけど、わー、舞台は恐えわあ。
でも「演じる楽しさ」が「フラワー・フェスティバル」からびしびし伝わってきて、わー、やっぱり弾きたいわー、舞台でー。
いいねえ、ピアノもバレエも。
こういう世界でどーたらこーたらってめっちゃええなあ。
よし、あたいもきれいなフォームでピアノ弾くぞ!と気合いを入れて、ツェルニーを練習しよりました。
いいマンガ読んだら、触発されていい方向のやる気が出ますな。