すっかり変わって「別人」になり果てた母

日々のあれこれ

もともと母が、流しも洗面所も日ごろから掃除しておいてくれたので、私がすることはたいしてなかった。

フローリングの床掃除は、ルンバにまかせた。

おまいはビンボーのクセに、なんでルンバ持っとるねんっ?!と叱られそうだが、いや、コレ、たまたまアンケートの抽選で当たったんだよ。

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だいたい「ポイ活」やってるヒトは、こういうの、マメに出しているから、私もマネしただけ。

で、私の旧居は18,000円アパートで、例によって床可視率が30%とかで、ルンバなんて放し飼いにしたら、たちまち遭難しそうだった。

ところが、サ高住の部屋は25㎡もあり、あらかた荷物がなくなりつつある時分、ルンバを投入したら、こいつ、よろこんでのびのびと走りはじめた。

引っ越しのスタッフさんは「あ、ルンバがいる!」「ペットみたいでかわいい」とみんな楽しそうにしていた。




エレベーターの渋滞も徐々に解消して、荷物の搬出が完了。

開始から終了まで、2時間36分だった。すべての荷物の梱包と搬出、早っ!

私は部屋の鍵を閉め、階下に降りて、居合わせたサ高住のスタッフさんにかんたんにあいさつをして、ササッと建物の外に出た。

ふう、脱北、意外とラクじゃん?と、あっけない幕切れだった。

で、例によって例のごとく、私のことだからとちゅうでコンビニに寄って一服とかしてたもんで、新居への到着が大幅に遅れた。

ま、引っ越し車のほうがウンと早く着くのはわかってたけど、しんどいしマイペースで。

案の定、私がようやく新居にクルマで到着したときには、すでに引っ越し荷物をどんどん運び入れている最中だった。

え? だれが鍵開けたんっ?!




そしたら、引っ越し屋さんいわく、「お母さまが、お部屋の鍵を開けてくれました」だと!

ひゃあ、玄関の段差とか、まだ福祉用具手すりとかも設置していないのに、母はどうやってひとりで鍵を開けたんだか。

あとで母に訊いたら、ピンポンが鳴ったあと、窓から引っ越し車が止まっている様子を見て、がんばってシルバーカーを押して廊下を進み、玄関の段差を自力で降り、扉の鍵を開けたという。

ありゃ、もうちっと早く私が到着しとけばよかったのう。

しかし、引っ越しスタッフさんが、みなさんいい方ばかりで、介護ベッドにちんまり腰かけているばあちゃんに、やさしく声をかけて、たくさんの荷物を運び入れてくれた。

私は私で、先に搬入した自分の荷物がまだ散乱しており、その家具配置を考えて、同時に移動してもらうのにてんてこ舞い。

そのうち、電気工事屋さんも来るし、ワケがわからなくなってきたが、結局、母の部屋は、引っ越しスタッフさんが配置をぜんぶやってくれて、ベストな位置に収まった。

私は自分の荷物にまだ掛かり切りで、母の部屋は、まったくノータッチだったのに、いやあ、プロはすげーなー!

と同時に、私の家具(ベッド、電子ピアノ、机等)もパッパと移動してくれて、こっちもいい具合にぴったり決まった。




ふつう、家具の配置までやってくれないと思うけど、たまたま今回のスタッフさんは、ほんといいヒトばかりで助かった。

母は母で、なんつーか「好々婆」?になっちまって、スタッフさんにも「かわいいばあちゃん」に見えるようで、みんなにいたわってもらってた。

さて、ようやく長丁場の引っ越しが終わり、私は疲れ果てて買い物にも行けない。

そしたら、母ちゃん、

「晩ご飯は、玉子かけご飯でいいよ。

サ高住じゃ、そんなのも出ないから、3年ぶりに食べたい」

なので、母ちゃんは玉子かけご飯、私はそれにプラス納豆という夕食になった。

そんなにしょーもない晩ご飯なのに、母ちゃんは「おいしい、おいしい」とよろこんでいた。

私は、そんな母を見て、またしても「むかしの母」の痕跡が微塵もなくて、ふしぎで信じられないような心地だった。

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