母ちゃん、たぶん認知症だなと思うことが、日々あらわれる。
たとえば、夕食を取る時刻について。
前々から、母は、
「もっと早く寝て、もっと早く起きたい」と言っていた。
これまで母は「朝6時起床、夜8時就寝」。
私は、事前準備や片付けがあるので「朝5時半起床、夜9時半就寝」だ。
ところが、母のほんとの希望は「朝5時起床、夜7時就寝」だった。
う~ん、まあそうするには、私が朝4時半に起きればいいのだが、気分的にしんどい。
だけど、とりあえず母の要望を尋ねていると、
「晩ごはんは夕方5時に食べて、それから6時に寝たい」と言う。
私「えーっ?! 夕方6時に寝ちゃうの? 起きるのは何時?」
母「起きるのはいつも5時なんですよ。
5時には目が覚めているんです。
でも、まだみなさん寝ていて、6時にならないと電気が付かないんです」
みなさんって、どこのみなさんっ?!
ああ、たぶん「いま、入院している」と思っているんだな。
母「あなたたちにも、いろいろ都合があると思いますし」
ひゃあ、私のことを看護師さんだと思ってるよ~
私「いえいえ、5時に起きたいのに、こちらこそすみませんねえ」
母「かまいませんよ、集団生活なんですから」
うわ、マジっすかっ?!
いやあ、あんなにアタマだけはしっかりしていたのに、とうとうこうなった。
今日は、またまたベッドの向こうを指差して、
母「あの……スイッチがあるでしょ?
スイッチ押したら……なんか降りてくる、その、なんか小さいの。
そのスイッチ、持ってきてちょうだい」
ふふ、スイッチだの線だの、電気系認知症ですかね。
私は「ああ、はいはい」と返事して、スイッチを探すフリをする。
ちょっとしてから、母に、
「う~ん、スイッチはないなあ。
そのスイッチ押したら、どんなふうになるの?」
母「ええと、音楽が鳴る……?
あ、それはラジオだし……こう、なんか動くような……いわゆる……なんと言ったらいいのか……」
ふうん、電動ベッドをしょっちゅう上げ下げしているから、そういう発想になったかな?
「いわゆる」がハサまるのがおもろい。
母「引っ越ししたとき、どこかに入っちゃったかもしれない」
私「あ、そうかも!
引っ越しでどっかにまぎれちゃったんだよ、きっと」
「ああ、そうだねえ」
「そうだそうだ」と適当にゴマかす私。
このごろコールチャイムで呼ばれて、母が、
「あの……向こうにある……」ではじまる会話は、たいていこんな感じですな。
さあ、つぎはどんな機械を欲しくなるかな?