いまから2年10ヵ月前、ピアノのレッスンを再開したとき、そんなにバッハだけを弾きたかったわけじゃない。
そうそう、当時は、ほんまに大バカで、すいません、音大行きたかったんだ。
いやあ、知らないって恐ろしい。
しかし、もちろん進学できるほどのレベルには、ぜんぜん届かない。
そして、おカネもない。
ふつうのひとは、そういう条件を整えてから、音大行こうかなと思うみたいだが、私は、あまりにも非常識すぎて、なんにも考えていなかった。
なんかねえ、おカネの計算とかしたことがなくて。(だから貧乏)
なので、しばらくしたら、当然のごとく却下。
けれども、バッハは、音大とは無関係で、レッスンではずっと課題になっている。
曲は、ソナチネだったりソナタだったり、数人の作曲家だが、バッハはどーんとずっと途切れずになにかをやっている。
インベンション → シンフォニア → フランス組曲。
おい、なんつーしあわせな惑星なんだっ、地球っ?!
この星で、ピアノを習う生き物は「バッハを弾くべし」という決まりがあるなんてっ?!
もともとバッハが好きだったが、じっさいに自分で弾いてみたら、もっと異様に好きになってしもうた。
気がついたら、「バッハの沼」にズブズブ首までつかっている。
バッハ、すごいねえ。
弾いても弾いても、またすぐに弾きたくなる。キリがない。
片手で弾いてもきれいで酔える。両手になったら桃源郷。
まあねえ、モーツァルトもきれいだけど、う~ん、う~ん、バッハほど綾なすうつくしさというか、緻密さというか、ごめ~ん、比べると悩ましい。
うつくしさの観点がまったくちがうから、ほんとは比べようがないものの、う~ん、「好き嫌い」というのはどうにもならない。
ただ、「自分で練習していて、その最中にものすごくしあわせになれる」とは、まったく予想外だった。
ほんと意外なことに、あ、人前でうまく弾けるかどうかとか、関係ないんだとわかった。
発表会は大きな目標で、すごく大切だけど、発表会本番の場で、そんなにね、快楽物質ドバドバ出ないよね。
ところが、日々の練習で、快楽どっぷりなのがバッハなんだよねえ。
笑いが止まらないおもしろさ、楽しさ、うつくしさ。
なんですか、これ?
▼バッハ:フランス組曲第4番 エール
▼シフの演奏│バッハ:フランス組曲第4番 エール
いやあ、なんでこんなに楽しいんだろ?
▼ペライアは、とてもしっとりと優雅で、これもすてき。
なんかもう、バッハ弾いてるだけで、おう、地球に生まれてよかったなあって。
しみじみ思うわ。
山もさんざんよかったけど、バッハ、ヤバいわ。
てか、ほかの作曲家がかすむのが最大の難点。