だれにも話せなかった音楽の悩み|遠方の心理学セミナー その8

今回わざわざ飛行機でこのセミナーに出席したのは、女性カウンセラーのO先生にお会いしたかったからだ。私は、O先生のブログをたまたま何かの検索で見つけて、1年ほど前から読んでいた。O先生は、著名な音楽大学出身で作曲家兼ミュージシャンだが、近年はカウンセリングやセミナーに力を入れておられる。

O先生のブログは、独特の魅力的な文体で、心理学のむずかしい内容でも、親しみやすい簡潔な文章で解き明かしてくれる。私がいつもお世話になっているN先生とは、またちがった良さがきわだっていて、とても惹かれていた。

その憧れのO先生が、私の座っているテーブルに回って来られた。O先生は、ほとんど笑顔を見せないかただった。私はソコにも強く惹かれた。愛想笑いをしない女性ってすばらしい。ふつう「笑顔がステキ」というのはよくあるけれど、「笑わない真顔がステキ」というのも珍しい。しかし、コレってご自分にとても忠実でおられるのではないか。

さて、いまこの場は懇親会であるから、本来ならば個人的な相談はNGである。それは、ちゃんと個人カウンセリングを申し込んで相談するべきだからだ。しかし、私はあえて先生に話してみようと思った。私もこれまでN先生にかなり教えてもらっているし、その問題はおおよそ10分ほどで話せるように整理してあった。

私はO先生に、少々ズルいかな?と思いつつ、遠方から飛行機で来たことを告げ、「それは、ぜひO先生にお会いしたかったからです。少しだけお話を聞いていただけますか?」と頼んでみた。O先生は「かまいませんよ。どんなことでしょうか?」とおっしゃってくれた。

私「クラシックの楽器を専門的に習うひとって、ふつう4~5才からはじめますよね。たとえばピアノでもバイオリンでも。それは、親の意志で子どもに習わせるのであって、子どもが自発的に習いたいと思うケースはほとんどないですよね。そういう子どもが大人になったとき、もし『じつは自分は本当に音楽をやりたいのではなかった』と気づいた場合、その後はどう音楽に向き合うのでしょうか? 先生は、きっとそういうかたをご存じだと思って、ぜひお尋ねしたかったのです」

この問いは、私のなかにずっと存在していた。そういうヒトはきっといるはずだけれど、ネットで調べても答えが得られなかった。「自分と音楽」の間がこじれてしまったヒト、というのを見つけられないでいた。私がこの問いをN先生にしていなかったのは、音楽の世界の背景を説明するのがむずかしそうだったからである。もちろん、N先生でも的確な回答をくださるだろうけど、しかし、実際にその世界に住んでいるO先生のほうがはるかに通りがいいように思えた。

O先生はさすがに察しがよくて「あなたがそうなのですか?」とすぐに言われた。私は「いいえ、というか、自分が本当に音楽を好きなのかどうかよくわからないのです。妙な距離感があって悩んでいるのです」

そして、私自身のこれまでの経緯をかいつまんで話した。「4才のときからピアノをはじめて、小学3年のときには両親から『プロになるように』と言われていました。気がついたら毎日ピアノを弾くのが仕事のようになっていました。しかしプレッシャーが非常に強くて体調を崩し、中学1年ときに母がピアノをやめさせました。それからしばらくは母から虐待に近い扱いを受けていてつらかったです」

「数年前からネットによって、自分が受けていた音楽教育の水準がわかるようになり、いまになって虚しさを感じたりします。子どものころにはまったくわかりませんでしたが、40才を過ぎたころから『音楽の真価』のようなものが自分なりにわかってきて、ピアノをやめてしまった後悔にも襲われます」

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