先月26日にパートを辞めた。
シフトの終了時刻になったとき、たまたま周りにいた先輩パートさんと上司ぐらいに軽くあいさつして、さっさと会社をあとにした。
先輩さんたちは、みなさんいいかたばかりだった。ただ、とくに親切にしてもらっていた先輩Mさんが、たまたまその日は出勤ではなくてあいさつできなかった。
先輩Mさんは、いちばんていねいに仕事を教えてくれたかただった。ご自分の仕事だけでも手いっぱいのはずなんだけど、ちょっとでも時間があれば「春子さん、コレもやってみる?」とこまめに新しい内容を説明してくれた。
ワシのあとに、もうひとり新人さんが入ってきたけど、そうしたらまた「春子さん、今度はアレもやっとこか? 新しいヒトに『そんなんも知らへんの?』って思われたらイヤやろ?」などと言ってくれて、めんどくさいハズなのにまたくわしく教えてくれる。
60代前半ぐらいの目鼻立ちがクッキリした女性だった。スラッとしたヒトなのでぜんぜんおばさん臭くないんだけど、あれこれ細やかに世話を焼いてくれて「あったかいおっ母さん」みたいなヒトだった。
Mさんにはやっぱりあいさつしておきたかったので、退職した翌日の夕方、また会社へ行って、こっそりMさんを呼んでもらった。
Mさんは「わざわざ来てくれたん? ありがとう。寂しなるな。カラダだいじょうぶなん?」と言ってくれた。
ワシは、用意しておいた手紙とお菓子をMさんに渡して、「これまでホントお世話になりました。感謝してます」って言って、思わずMさんの手を取った。
と同時に、ああこのヒト、ホンマやさしいヒトやったなあと思い出されて、ぶわーっと涙があふれた。
まあでも、恥ずかしいしみっともないから、そのあとそそくさとお別れして会社の外に出た。
クルマに戻ってから、もうちょい泣いてみたらずいぶんスッキリしてすがすがしい気分になった。
これがとりあえず1回目の経験。
2回目は、おととい心理学セミナーでの懇親会のときだった。
セミナーに来るヒトたちは、心理学を勉強したり興味があるヒトばかりなので、それこそココロの機微を読めるヒトが多い。
セミナー会場で、たまたま隣り合わせになったTさんは、ちょうどそんな繊細で女性らしさがあふれるヒトだった。
セミナーが終了したあと、懇親会までのあいだもずっといっしょに話をしていた。
初対面なのに話していて疲れない。そしたら、ふたりして懇親会にちょっと遅刻してしまった。
懇親会ではお酒も入って、だんだんみんな自由に席を替えて楽しそうにグダグダしている。
ワシも気になるヒトには声をかけて、「どの先生のなんの関係でココに来たんですか? いまの悩みはなんなの?」とか遠慮なく訊く。
だいたいみなさん、「ココでしか言えない事情」とか抱えているので、お互いそれを開示して、「う~ん、それじゃこうしたらどうかな?」とかカウンセリングモードに入ったりしてスゴくおもしろい。
すると、それまでワシの隣にいたTさんが、席を移動しはじめた。あれ?どこに行くのかな?と思って見ていたら、ひとりだけポツンと座っていた女性のそばに近づいて行った。
そのおとなしそうな女性は、とくにダレとも話さずボッチ状態だったのだ。
Tさんは、それを気づかってその女性の話し相手になるために席を移動したのだった。
えーっ?! やさしい! 飲み会のときぐらい気ィ使わんと自由にしたらエエのに、こんなに座が乱れているときでもそんな行動が取れるってやさしい!
しばらくたって、またTさんに会ったとき、ワシは思わず「Tさん、やさしー、ありえへんほどやさしー!」って連呼して、そうしているうちに涙がポロポロこぼれた。
Tさんは「えーっ、そんなことないよーっ、ああ、でも私も泣ける。ちょーだい!」って言って、ワシの薄汚いハンカチをひったくって泣いていた。
「やさしさ」に浸るってものすごく心地いいね。
「愛」だよね、やっぱり「愛」。
今日から、ピアノの練習を再開した。
まだ親指を使えないから、相変わらず「親指ヌキ」でインベンションを練習してる。
でも、ふと思ったけど、そうか、長調のときって「やさしさ」とかを込めるとすごくいいんじゃないかな?
先輩MさんやTさんのやさしいまなざしを思い出しながら弾いてみたくなったよ。