「あまりにも仕事を覚えられないから」と暗に退職を迫られた

今日出勤したら、ある正社員のかたに「ちょっとお話があります」と手招きされた。
そのBさんに付いて行って、とある一室に入ったら、こないだ面接のときにもお会いしたエラいさんのAさんがすでに席に付いていた。

なんだろう? 入社してもうじき1ヵ月になるから「なにか困ったことはありませんか?」とでも訊かれるのかな?

なーんてマヌケヅラ下げていたら、ぜんぜんちがった。
「困っている」のは会社だった。

要するに「春子さんがあまりにも仕事を覚えてくれないので、どうしましょう?」というお話だった。

はあ……、たしかにオノレの物忘れのヒドさは、それこそ本人がいちばんよくわかっているから、そりゃ困るだろうなと同意したよ。

そして、こういう場が設けられたいきさつもなんとなくわかった。一部の先輩パートさんが、ワシのアホウぶりにあきれていたからだ。
二十代三十代の女性のヒトたちだけど、べつにだからと言ってイジワルをするとかそんなのはぜんぜんないが、ものすっごく不審がられていた。

ワシ、どうかすると30分ぐらいまえにあったことも忘れとる。そして、お客さんの顔をまったく覚えられない。当然いっつも「はじめて見るお客さん」になっちまう。

「それは困るんですよ。常連のお客さまにスムーズに対応できないとたいへん失礼になりますでしょ?」とBさん。
はい、それはもう、おっしゃるとおりでございます。

Aさんは「クルマの運転はだいじょうぶですか?」と尋ねた。
う……あんまりだいじょうぶじゃねーよ。しょっちゅう迷うし。
でも、いちおう「はあ、まあだいじょうぶです」と答えた。と同時に、ああもう認知症をうたがってるんだなとわかった。

「昨日はじめてやったことを今日できますか?」
「それは、備忘録を見ないでということですか?」
「はい」
あ、そりゃムリと思ったので、正直に「いいえ、まったくできません」と答えた。

やっぱりぜんぶホントウのことを話しておこう。
「記憶力がすごくおとろえはじめたのは10年ほどまえからです。どうかすると、午前あったことも午後にはすっかり忘れています」と答えながら、そうだべ、ワシ、ツェルニー30番ですらやった曲かどうかわかんねーもんって思った。

コレ、すげえよね? 少なくとも一週間練習した曲なのに、弾いたかどうか忘れとる。
あと、たまにメシ食うのも忘れる。よく食べ忘れるのは晩メシ。翌朝冷蔵庫見て、あ、昨日晩メシ食うの忘れたとか気がつく。

そのうち、Bさんがちょっと険しい表情で「ここではスピードも必要なんですよ。いまのスタッフさんのレベルにせめて2ヵ月ぐらいでなっていただかないと」

ああ、それはもっとムリやねえとワシは絶望したんで、「すみません、これまでどこの職場では『仕事がおそい』と言われつづけてきたので、たぶんふつうのヒトの3倍ぐらいはかかると思います。申し訳ありません」とうなだれた。

するとAさんはこう言われた。
「これから忙しくなりますしね。募集をかけるなら早くしないといけないし。うちは即戦力が欲しいんです」

ここに来て、ニブいワシもようやく気がついた。
ああそうか! 辞めてくれっちゅーことかっ!

さすがにちょっと蒼くなった。
そうか、無職になるんか。どうしよ? といっても、手を使わない職ってめったにない。ここぐらいや。
ここ辞めたらどこも就職できへん。そしたらピアノのレッスンに通われへん。ピアノのローンも払われへん。

一瞬クビ吊るんなら、どこの山にしよ?ってのがアタマをよぎったが、いや待て、もうちっと粘ろうと思い返した。

それで「備忘録の一部を自宅に持って帰ってもいいでしょうか? 機密事項に当たる部分はのぞいて、それ以外をウチでよく勉強するようにします」
するとまあ、そのことは了承してもらえた。

ワシは「できるかぎり努力してみますので、もう少し様子を見ていただけませんか?」とお願いしたが、おふたりはあまりいい面持ちではなかった。
とうとう40分ほどいろいろ話し込むことになってしまったが、やっぱり自分から「辞めます」とは言わなかった。ここの職場が大好きだったから、とても言えなかったのだ。

そのあと、仕事場に戻った。う~ん、ショックの度合いは50パーセントかね?
「物忘れがヒドすぎる」ことはじゅうぶん自覚していたし、そして、そのことをべつに「悪い」とは思っていなかった。

そう、だってトシやからしかたないやんって思ってて、つまり「物忘れ」をする自分を責めてなかったんだよね。
コレがもし「物忘れがヒドい自分を否定」していたら、すっげえショックを受けるはずなのだ。

「自分が否定している部分」を他人に指摘されると、ソレはまさに「地雷」を踏まれることになるので、ひどくハラが立ったりショックを受けたりする。

でもまあ、そういうのはなかったな。
マズいのは無職になるとすっごく困るってこと。だいたいほかに手を使わん仕事が見つからへんし。

ウチに帰ってから調べたけど、「仕事を覚えないから」といって解雇するのはなかなかむずかしいようだ。
ならば、しぶとく居座ろう。

そして、そりゃもちろん最大限の努力はしよう。
仕事の復習もするし、お客さんの顔を覚えるために、明日からもっと早く出勤してみることに決めた。

にほんブログ村 クラシックブログ ピアノへ にほんブログ村 ライフスタイルブログ 50代の生き方へ にほんブログ村 シニア日記ブログへ にほんブログ村 ランキングに参加しています。お好みのカテゴリーをポチッてくだせえ。おねげえしますだ。