友達のKさんから「春子さん、悩み聞いてください」というLINEをもらった。おお!セッションの練習ができるじゃん!とよろこびいさんで電話カウンセリングをすることにした。時間は45分の設定。ワシは傾聴モードで聴き役に徹する。まあ電話でもあるし、相手に伝えられるのはあいづちと伝え返しがほとんどだ。
伝え返しとは、傾聴の技術のひとつで、相談者が話しているとちゅうにわざわざ口を挟むことだ。たとえば、話し手が「〇〇なんですよ」と言ったら、聞き手が「〇〇なんですね」と返す。話し手「そしたら〇〇になって」→聞き手「ああ、〇〇」。
さて、今回のように友だちに相談者になってもらったときも「クライアント記録」というものを作成しないといけない。その記録フォーマットにしたがって、Kさんの率直な感想を訊いてみた。
◆数字で評価してください。全くそう思わない(1)~とてもそう思う(5)
1.話しやすかったですか? → 3
「聞く感じがオウムみたい。鳥としゃべっているのかと思った。」
2.わかってもらえた感じはしましたか? → 2
「聞いているのかなあ?と思った。」
3.大事に思ってもらってる感じはしましたか? → 3
「あいづちが変。本当に聞いてるのかなと思った。」
4.決めつけや一方的なアドバイスはありましたか? → なかった
5.気づきや発見はありましたか? → 3
6.すっきりしたり、良い感じはありましたか? → 2
●セッションしてもらってよかったところ
「おもしろかった。ひとりでこんなにしゃべれるんだと思った。漫談みたい。まるで落語家とオウムのコントだ。」
●途中、困ったり違和感を感じたりしたところ
「あった。これ以上話せないと思って息苦しくなった。話さないといけないと思った。反応がなくて電話が切れてるんじゃないかと思うときもあった。」
●こうしてもらえるともっと良くなると思うところ
「あいづちがヘタクソ。もっと早くあいづちがほしい。オウム返しを何とかしてほしい。バカにされてるみたいに思う。」
●このカウンセラーへの応援メッセージ
「オウムはやめてせめてセキセイインコになって。もっとすばやく文鳥並みに。相手によってあいづちや話すテンポを変えたほうがいい。私は走ってるのに、後ろを振り向くと春子さんがゆっくり歩いてついてきているみたいだ。」
いやあ、本音を正直に話してくれる友人はありがたいね。けちょんけちょんなんだけど、勉強になるよな。
受講生同士では、おたがいに「カウンセリングはこういうもの」という前提があるから気づかなかったが、カウンセリングをまったく知らないヒトが感じる「違和感」を教えてもらえてホントに助かった。
Kさん、ワシのことを「おだやかな緑色のオウム」と言ったが、なかなかに穿った表現だね。そしてとてもがっかりしたのは、「すっきりしたり良い感じ→2」というところだった。
それなりに力を尽くしたつもりだけど、セッションの効果はほとんどなかった。それが事実なのだ。受講生同士の間で自主トレをしていたときはそこまでヒドくなかったので、さすがにがっくりきた。
で、あらためてオノレのことがよくわかったけど、まあアレだね、テンポを早くするのはムリだね。ワシはすべてにおいて「ゆっくり」としかできないんだよね。カウンセリングだろうが仕事だろうがツェルニーだろうが、なんでもゆっくりしかできない。
そりゃ毎日職場で「遅い、遅すぎる、もっと早く」と言われつづけているし、高速走れば大名行列作っちまうし、ピアノのレッスンでも「もっとテンポを上げて」だし、すげえなあ、全人類から「もっと早く!」と要求されているのかもしれん。
だが、短所は直さないほうがいいそうだ。そもそも直らない。それほど困難なことに力を注ぐのはコスパが悪すぎるらしい。
では、改善できるところといえば、あいづちの返し方だね。伝え返しも型にはまったやり方ではちっとも効果がないと痛感した。これはもう、ちゃんと録音して悪いところを改めていかねばならない。
けれども、セッションの最後5分ぐらいのとき、ほんの少しだけ光が差したように感じた。その直前までKさん自身が「ありえない」といいつづけていた事柄を、その最後にさしかかったとき「ありうると思う」とKさんが言ったのだ。
それを聞いた瞬間がいちばんうれしかった。それはきっと、Kさんが「本来の自分」につながった瞬間だったんだろう。
カウンセリングの目的はそこにある。相談者さんがそうなれるように、もっと鍛錬しなければ。