58才で勉強をはじめたのが、じつは最適だった理由

よりによって、こんなババアになってから新しくはじめたことがふたつもある。ひとつはピアノで、もうひとつはカウンセリングの勉強である。

ピアノは、コドモのころ13才まで習っていたが、親が「ゼニおまへん」ってことでやめた。でもずっと未練があったので、去年4月からレッスンを再開した。ちょうど57才だった。どうせやるなら目標があったほうがいいし、大学にも進学したかったので某芸術大学をめざしている。

カウンセリングの勉強は今年3月からはじめた。数年前から心理学のセミナーに通いはじめて、いつかは本格的に勉強したいと思っていた。さらに某芸大の学費が1000万円ほど必要なので、将来カウンセラーになって学費を工面したいともたくらんでいる。

なにもなあ、57だの58だのってトシからはじめて、そんなとこへ行き着くつもりにならんでもなあ。まあでも、やりたいと思うとさっさとやっちまうのが私なんだよね。


しかし、こんな私でもさすがにはじめるのが遅すぎたなーとついこないだまでは思っていた。いちばんの障壁は「物忘れ」である。とくにカウンセリングの勉強はザルで水を汲んでるみたいでなにも記憶に残らない。

課題図書を読んでもさっぱり頭に入らないから、4月早々にはもう落ちこぼれてしまった。カウンセリングの勉強って、ウチでやったのはたぶん数時間ぐらいじゃないか。

あまりにヒドすぎたので先日最終講のとき、プレゼンでは開口一番「これほど勉強をしなかったのははじめてです。『勉強する』『知識を学ぶ』ということにおいて、人生最低でした。それにカウンセリング中の話を片っぱしから忘れてしまいました」と言ってうなだれた。

まあ、もうちょっと勉強できるかなって思ってたんだよね。数年前だったら、とても興味のあるセミナーならばICレコーダーでまるまる録音して、そしてそれを文字起こししていた。そんなのは好きでやっていてどうってことなかった。もちろん内容もばっちり覚えていた。

いま思うとほんまに同一人物かいな? それほどにね、トシを取るといろんなことがめんどうになってどんどんやらなくなってしまう。なので、若いころ(といってもほんの数年前でこんなに差が)の自分と比べては落ち込んでいた。もうこんなに物忘れがヒドいとなにをやっても意味ないんじゃないか?


最終講プレゼンのあと、みんなで感想を書いて互いに交換しあった。いま私の手元には21枚の感想文がある。みんな一所懸命書きつづってくれていた。そのなかには、私のことを「エネルギーが強いヒトだと思う」とか「自由な感じがする」などと書いてくれたヒトが何人かいた。

複数のヒトが「似た要素」を感じてくれたのはたいそう興味深かった。ふぅん……私ってそんなふうに見えるんだ!

なので、すなおになってみることにした。べつに「物忘れを気にしなくていいよ」というコメントをくれたひとはだれもいなかった。物忘れにこだわっているのは、私だけだ。そうすると、「物忘れを理由になにかを回避しようとしている」ことになる。

それはだな、「カウンセラーになる努力」を避けようとしているんだな。なにか「ちゃんとした理由」があると、自分自身のせいにしなくてもいいからね。「物忘れがー」「脳ミソがちぢんでるからー」「ババアだからー」って言ってたら、なによりも自分を責めなくてすむからね。


みんなが書いてくれた感想文を読んでいたら、突然ぱぁん!とはじけた。

そうか、「なにかをはじめる時期」というのは、それだけで「必然」かもしれない。もっとも適した時期に「ホレ、これやってみなはれ」って渡されるモノなんだ。「はい、お時間が来ましたー」って呼ばれるモノかもしれない。

私の場合は「57才でちーん♪→ピアノ弾けよっ!、58才でちーん♪→カウンセリング勉強せーよっ!」という時間割りになっていたのかもしれない。

そして、そのときいっしょに与えられたのが「物忘れ」というギフトだね。


物忘れのメリットってなんだろう?

それは「謙虚になれる」ということだ。ほんの数分前のできごとも忘れてしまう。そういうオツムを抱えていると、だれに対しても「これがありのままの自分です。それでもよかったらOKしてください。具合が悪かったらNGでいいですよ」とふるまえる。

OKかNGかを選ぶのは相手である。私は「どっちでもいいですよ」と鷹揚にかまえていたらいい。

以前は「相手の期待にこたえないといけない」とついがんばったり、がんばったらがんばったで「認めてくれよ!」と不満タラタラだったけど、物忘れのおかげでそういうポジションを離れることができた。

だから「いまの私」が「いまの時間割り」を粛々とこなせばいいだけだ。なので、ピアノとカウンセリング、両方とも回すことにした。

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