ひっそりと控えめに書いておく。
「よし! 某芸術大学に行くぞっ!」なんて旗を振っとるが、ほんまはビビッてる。ま、行きたいという気もちは変わらないけど、なにせ肝心のピアノがいつまでたってもアレだし、ゼニなくて相変わらず素寒貧だし、わりかし八方ふさがりじゃん。
ピアノの先生からは、ごくたまーに「1年生の後期試験からむずかしくなりますからね」ということは漏れ聞いていた。
まずね、後期ってなんじゃらほい? 後期というからには前期があるんだな、きっと。1学期とか2学期、3学期じゃないんだ。高卒のババアにはわからんがな。そいでさ、先生がそうおっしゃるということは、つまり「いまぐらいじゃ、1年生の後期でもうダメ」ってことだろうね。
まあ、あんまりピンと来てなかった。やっぱり入試がぁーって思っていたし、その入試すら何年先になるかわからない。で、弾けないわ、ゼニないわ、たぶん入試なんてずーっと先と思ってて、いやあ、何年先になるのかさっぱり未定でね。
とりあえず還暦越すのは確実で、そうこうしているうちに年金もらえるじゃん。けど、なんぼなんでも65才ってのはヤバすぎるか。デイサービス代わりに大学行くのはあかんかのう?
そしたら、こないだのレッスンで、バッハ:フランス組曲第5番サラバンドを弾いたあとに、先生がこう尋ねられた。「入学するお気もちは変わりませんか?」
それはぜんぜん変わらないので、しかし少しばかり声のトーンを落として「はい、そうです」と私は答えた。
先生「バッハは、フランス組曲のあと平均律をやります。平均律のレパートリーを増やしておけば、バッハに関してはたぶん〇年生ぐらいまでほぼだいじょうぶでしょう」
マ、マジすかっ?! 一瞬なんのことかわからないほどびっくりした。まあねえ、寝ても覚めてもバッハバッハで、なんかバッハ偏重練習してきたけど、うむー、要するに好きなことやってたら道は開けるんだねえ。
なーんて思ってたら、そりゃ大まちがいで、「練習曲がねえ」というお話になった。なんか試験のたんびに練習曲を弾かないといけないらしい。先生が「ショパンのエチュードになりますからね」とおっしゃる。
マ、マジすかっ?! いまようやっとツェルニー30番ひーこら言って終わったばっかりなのに。それもぜんぶ超低速だからね。テンポ上げるとか、しっかりした音を出すとかぜんぜんダメなんだよね。
そっかー、音大行ったらショパンのエチュード弾けるのがデフォルトなんだー。そんな世界は想像つかないよ。
それでわかったんだけど、「速く弾く」のはかなりむずかしいことなんだな。バッハのような「多声を弾き分ける」ほうが、比べたらまだ習得しやすいんだ。てか、たぶん「すばやく動かす」のはこんだけババアになるときびしい。あまり覚えていないが、子どものときのほうがもうちっとマシだったように思う。
それで、決心した。よっしゃ、これからはツェルニー40番がんばるぞ。そんでもってテンポ上げるぞ! パリパリ弾けるのめざすぞ!
あと、ややこしいからゼニの算段は後回しにしようっと。まずは指が回ったらよろしい。