「やりたくないこと」「わからないこと」「できないこと」「忘れること」「慣れないこと」が、トシを重ねるにつれてどんどん増えていく。ありゃー、まー、こんな老後になるとは、若いときにはぜんっぜん予想できなかったよ。
その「やりたくないこと」のひとつに「ピアノの調律」があったのだが、艱難辛苦を乗り越えて、本日ようやく調律師さんに来ていただいた。
なんかねえ、ものすごくイヤなこととして「予定を入れる」ってのがある。「何月何日何時何分から拘束される」というのが非常に苦痛なのだ。この悩みは数年前からにわかに発生して、年々悪化している。(除、ピアノのレッスン) パートのしんどさもこの「拘束」に由来している面が多分にある。
予定、ほんとかなりダメで、他人の予定ですら緊張を強いられる。去年クビになったパートは「予約を取る」という仕事も含んでいたのだが、そのパソコン作業をまったく覚えられなかった。たぶん「うっすら恐怖を感じる」からやれなかったんだと思う。
私は、ひとのことであっても、なにかしら「予定を決める」要素がある仕事はやりたくない。みたいなのは、ちゃんと自己探求して解明せんとあかんけど、あぅー、その探求する予定を立てることがもはやできない。
だから、調律の予定もずっと入れられなかった。もう、ピアノのことなんだから、こんなに放っといてどーすんのっ?!って泣き叫びたい気分だったけど、でも日程を決めることができなかった。
しかし、前回「ビリーフリセット・リーダーズ講座」第7講の三日後、ちょっと気分が持ち上がってなんとか調律師Oさんにメールを出せて、今日午前10時に来てもらえることになった。去年7月に買ったグランドピアノの調律がね、1年3ヵ月後とはねえ、なんかもうあちこちで土下座してあやまりたい。
Oさんにも平身低頭であやまったけど、「耳って適当に修正して聞けるものですから、ちっともかまいませんよ」ととてもいいように言ってくださる。ほんとは、半年後ぐらいに調律したほうがベターと聞いていただけに申し訳ないことこの上ない。
結局、すべて終わったのは午後4時になってしまった。とちゅう15分ほど休憩されたり、お話も聞いたりという時間があったものの、実質5時間以上かかってしまった。放っていた私が悪いのだから、もともと通常より多めにお代金を支払うつもりだったのに、どうしても受け取っていただけなかった。すみません。
去年搬入のときも長時間立ち会ってもらい、そのあとやっぱり念入りに調律していただいて、でもそのときも今日もずっとにこやかに対応してくださる。
ほんと悪かったなあと思いながらも、今日調律してもらったあとは、Oさんの前でちょっとだけ自分で弾いてみた。ショパンのワルツを数小節弾いてみたのだが、うわっ、鳥肌が立つほどうつくしい音色になっている! まろやかで深みのある音がふんわり広がって仰天した。
Oさんは「立体的な音」と表現されていたけど、ああそのとおり、一音一音が立ち上がり分離して、それなのに幾重にも重なりあった響きがふわあっと広がっていく。
それに、鍵盤がまるで指に吸い付くようなタッチに変化していた。離鍵のときの浮力が増していて、あ、これはちがう! これなら離鍵のコントロールがものすごくやりやすそうと思った。ヘタクソなりにもトリルとか抜群に入りやすくなっていた。
それは、「レペティションレバースプリング」を調整されたからだと説明してもらった。さらに、ダンパーペダルの反応もすごくよくなっていた。こちらも調整されたとのことで、う~ん、調律って音の高さだけじゃないんだと唸ってしまった。なんかピアノ交換したみたいに生まれ変わってるよ。
こんなにすごいことになるんだったら、これからはぜったいもっと頻繁に調律をお願いしよう。
それから、ほんとだれかに迷惑かけないようにしないとねえ。自分のやる気のなさを理由に、いろんなひとの好意や努力を無にしているようで、さすがに今日はコタえたわ。