【注:残虐表現あり】インナー母ちゃんに対して「怒り」を出すワーク その2

むかし包丁で自死した祖母(義理の3番目の祖母)が、ピアノのイスに座っているのが見えたが、とうとう会えたのかという気もちもあった。どこか「やっぱり」という思いもわずかにあった。たぶん、この「怒りを出すワーク」で「刺す」「刺したい」「それぜったいやろう」と思った時点で、もうおばあちゃんの気配がごくうっすらあったはずだ。

ちなみに「おばあちゃんが見える」といっても、「ありあり鮮明に見えている」のでもなく「幽霊のよう」でもない。エンプティチェアという技法をやっているときと同じ見えかただ。

だれも座っていないイスを前にして、カウンセラーに「いまお母さんが座っていますよ。どんな表情をしていますか?」と尋ねられると、ちゃんとお母さんが見えてくるのとおなじである。これは、エンプティチェアをまったく知らないクライアントさんがやっても見えるものなのだ。

そして、その「お母さんのイス」に自分が座ってみると、こんどはお母さんに成り代わって、自分で「お母さんの気もち」をまるでイタコのように話しはじめる。「33才のお母さん」が「4才の自分」にくどくど文句を言ったりする。


結局なにが起こっているかというと、「すべて自分のなかにもともと存在している」のだ。4才のときに「33才のお母さん像」を形成して「インナー母」としてずーっと持ちつづけている。その「傷ついた4才の子ども」も「インナーチャイルド」として心のなかにある。

さて、私は「3番目のおばあちゃん」に一度会っただけで顔も覚えていない。「春子ちゃんはやさしい子だね」というおばあちゃんのことばだけが記憶に残っている。おばあちゃんが自殺したという話は母から聞いたのみで葬式も行っていない。

おばあちゃんに関する手がかりはたったそれだけだというのに、でも私の潜在意識では「重要な人物」として「インナーおばあちゃん」を形成してしまったようだ。たぶん死に方のインパクトだよね。包丁を首に刺して自殺したということに惹かれたんだ。

ということは、私も子どものころから、どこかで「死」に引っ張られていたんだ。そういうことだったんだ。それほどつらかったんだと、ごく最近気がついた。


ピアノのイスに座っているおばあちゃんと向き合っていると、泣けてしょうがなかった。さっきじっさいに包丁を自分の首にあてがったとき、え? ここから「本当に刺す」ってどうしてそんなことができるんだろう?と背筋が寒くなった。

だから、私はおばあちゃんに尋ねずにいられなかった。
「おばあちゃん、どうして死んじゃったの?」

おばあちゃんはなにか言いたそうにしていた。私はふらっと立ち上がり、ゆっくり身体の向きを変えてピアノのイスに腰かけた。

おばあちゃんのイスに座ると、私はおばあちゃんになった。私の口からはおばあちゃんのことばが自然に出てきた。おばあちゃんはこう言った。


「死んだ理由? それはね、あの男に復讐したかったからだよ。あいつに思い知らせたかったんだよ。私があいつのせいでどれほどズタズタにされたか、それを見せつけたかったんだよ。だからあの死に方を選んだんだ。血の海にしたかった。そうでもしないとあの男はなにひとつわからないからね」

おばあちゃんは怒りに身を震わせながら吐き出すようにそう言った。

私は一瞬わからなくなった。え? おばあちゃんはおじいちゃんに復讐するために自殺したの? そんなことのために死んでしまったの?

おばあちゃんは、私の気もちを察したかのようにまた話しはじめた。
「後悔はしてないよ。私はこれでいい。でも、春子ちゃん、あんたは怒らないとダメだよ。ひどい目に遭ったんだろ。じゃあ怒るんだよ! 怒鳴るんだ! 黙ってたらぜったいあかんよ!」


よくわからないのだが、そのことばのあとに、私はおばあちゃんのイスから立ち上がり、ふらふらと自分のイスに戻った。そして、目の前にぼーっと見えているおばあちゃんにこう尋ねた。

「おばあちゃんは、そのことを言うために来てくれたの?」

おばあちゃんは無言でうなづいた。

私は、机の上に放り出していた包丁をもういちど手に取り、そしてゆっくり立ち上がった。

ああ! おばあちゃんの怒りが、無念さが私の身体に宿っている! 「怒り」ってガタガタ震えるほど強烈なものなんだ!


そうだよ! 私も怒っているよ! あんなに殴る蹴るの扱いを受けてさ! いつも憎々しげに睨まれてさ!

おまえが悪い、おまえのせいでこうなったああなった、おまえがつぐなえ、わがままだ、なまいきだ、自分勝手だ、あれもできないこれもできない、なにをやってもダメ、弱い、おまえのせいで私は不幸だ、育ててやったのに裏切った、ってのを何万回も言われたよな。

私はいつの間にか、大声で母を罵倒していた。泣き喚いていた。
「なんでもおまえの言うとおりになると思うなよっ! おまえ、なんにもわかってないだろっ!」

そして、包丁を握りしめて流しに向かい、白菜めがけて包丁を激しく突き立てた。

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