メトロノームの上げ下げに余念のない毎日だが、「速く弾くこと」が目的ではない。
いや、先生がよく言われるのだけど、「その曲にふさわしいテンポ」にすることなんだよね。その曲がもっとも魅力的に聴こえるテンポで弾けるようにしましょうってことで。
で、テンポも含めて、いろんなテクニックを自在に操れるようにするために、ツェルニーを練習するんだなあ。
と、2ヵ月ほど前にようやく気づきましてな。
▼ツェルニー40番の9番
「ドレミファ|ソファミレ」がひたすらうねうね。
これ、5月1日からねちねちやっていた。たかが「ドレミファ|ソファミレ」でも「しかるべき最適ライン」を通って弾くのは至難のわざ。「ドレミファ|ソファミレ」の弾きかただけで計1時間以上解説していただいた。
あ、「弾く」というより、「手首の回転」と「腕の重みを指先に伝達」だな。
テンポが速くなってくると、「ドレミファ|ソファミレ」は、五指を鍵盤に乗せたままコネコネしているだけに見える。軽~く最小限ゆるゆる回るのみ。
その「コネコネ」にあこがれて、この9番はとうとうメトロノーム♩30から練習したよ。「2秒に1音」だったらなんとかフォームを整えられたからだ。けど、♩30のメトロノームは遅すぎるから、八分音符♪60ではじめたよ。
で、ちみちみ0.5ずつ上げていった。なに、藪コギにくらべたらたいしたことあらへん。猛烈なヤブは1時間に100メートルしか進まない。そんなヤブ行ったことねえんだが、メトロノームの0.5がどない?
そいで、6月11日(金)♩42までしか上がってなくて、いやあ、ほんまアホやわ、あと4日後にレッスンなのにまだ42ってなんなん?
あわてて、12日(土)~13日(日)の2日間で♩43→100、14日(月)♩101→120、いつもそうだけど直前に蒼くなってガーッと上げる。
さて、本日のレッスン、1回目は♩100ぐらいでなんとかヨタヨタ弾き切った。
すると先生が「では、つぎはこのぐらいで、ティヤララ|ティヤララ|ティヤララ|ティヤララ、はいどうぞ」
めっちゃ速いやん?! しかし大縄はもう回っている。
あのう、このごろよくレッスンの最中に「大縄跳び」みたいになりましてのう。
むかし子どものとき、大縄跳びヘタやったわ。私が入ると、たちまち引っかけて縄が止まってしまう。気まずい。だのに、大縄が回っていると入りたくなるんだよね。
なので、レッスンでもぶい~んぶい~んと縄を回されると、ついうっかり入りたくなっちまう。まんまとホイホイに引っかかって、また超高速大縄跳びを跳びつづける。
あちこちほころびたけど、奇跡的に最後までたどり着けた。はあはあふうふう。
先生「弾けましたね。さいしょのころは、あんなにゆっくりでしかできなかったのに」
私「はあ、こんなに速く弾くの、生まれてはじめてです」
ウチに帰ってからメトロノームで調べたら、このとき♩124ぐらいだったと思う。いやまあ、体感としてほんとクルマで124キロ飛ばしているかのようで、いつ大破炎上してもおかしくない。1ヵ月半前に30キロやっとだったババアが124キロって?!
しかしまだ傷だらけだったし、音楽的表現も乏しい。先生はしばらく考えておられたが、「いいでしょう、マルということで」と赤鉛筆でグリグリッと大マルを描いてくださった。
次の課題は10番が出された。要点を説明してくださったのち、先生はこうおっしゃった。
「やっぱりツェルニーはみごとですね。むかしからずっと使われているわけですし」
はああ、まことに仰せのとおりでございます。
ツェルニーって、ベートーベンの弟子だったんでしょ? それでリストの師匠なんでしょ?
ブレンデルがどこかに書いていたけど、「リストは、ツェルニーの練習曲をとても音楽的に弾いていた」らしい。
だのに、私はこれまでずっとツェルニーをサボッてきたんだよねえ。自分の勝手な判断で。ツェルニー30番のころからちゃんと練習していたら、もっと早くマシになっていただろうに。
次の10番からは、もっと大事に練習しよう。計画も立ててみよう。
何百年も信頼されてきた練習曲なんだと少しは思いを馳せてみよう。