禁断のベートーベン|「呪い」はもう解けている?

さて、モーツァルトソナタK332の第3楽章は「はじめてモタつきがありませんでしたね」とのことで、すごくミスが多かったにもかかわらず、先生は合格にしてくださった。
このソナタはほんとうに長いあいだ練習することになっちゃって、第1楽章をはじめたのが今年1月18日で、第3楽章がマルになったのが6月22日、ぜんぶで5ヵ月もかかってしまった。

でも、いっちゃんむずかしい楽章が第3楽章で、それなのにその第3楽章は5月2日~6月22日というわりと短い期間で合格したんだよね。


どうしてなのか?

理由はふたつある。ひとつはツェルニー40番を念入りに練習しているので、指の動きが根本的によくなってきたからだ。

もうひとつは、この第3楽章自体もかなり練習した。とくに右手で長々続く速い部分は、先生に教えていただいたリズム練習を取り入れてゆっくりていねいに繰り返した。

リズム練習ねえ、それ、あるのはむかしから知っていたけど、子どものときに習った先生はどなたも教えてくださらなかった。結局59才にしてはじめて「こうやってやります。まずは、強拍が長いリズムから……」ってイチから教えてもらえて、ちょっと感動。

で、ほんとうにちゃんと効果がメキメキで、指のすっ転びかたがだいぶんマシになったのよ。


だから、毎日できることをきちーんと粛々と積み重ねていたら、ほらあ、ちゃんとマルになるじゃん。

もうこれから先も、この第3楽章みたいに必ず練習しよう! やっぱり勢いよく弾いて勢いよく早く合格したいもん。

で、つぎのソナタは……っていうと、私はレッスンのときにつぎの曲をお訊きするのを忘れていた。バーカバカバカ! そのー、あのー、たぶん「ブログがバレたショック」でいっそうアホになってたんだと思う。

ウチに帰ってからそのことに気がついて、う~ん、どうしよう、先生にメールでお尋ねするのもすごく申し訳ないとウジウジ悩む。


そうしたら、次の日に先生からメールをいただいてしまった。うわあ、ショック! す、すみません。

しかも、つぎの曲はベートーベンのソナタになった。ぎゃあ! とうとうベートーベンっ?!

▼ベートーベン:ピアノ・ソナタ第10番Op.14-2 ト長調 第1楽章



えーっ?! このソナタを弾くって夢みてえだ。ありえない。想像したこともない。そんな人生なわけねーじゃん?!

すごくうれしい気もちと、すごくとまどう気もちと、すごく「それはやっちゃいけない」気もちが、ぶわっと湧いてきた。

そうだなあ、「それは、あかんやろ」って禁止される気もち、けっこう強いなあ。

ウチの親って、とてもベートーベンが好きだったのよ。私が子どものころ、ずっとベートーベンのレコードかけていて、ベートーベンの伝記の話とかもよくしていた。いま思うとすっげえヘンなんだけど、ごはん食べながら「甥のカール、恩知らずなヤツや」とか言ってめっちゃ怒ってるとか。


あ、ベートーベンは、甥っ子のカールを引き取って親代わりになってとても大切に育てていたらしい。そんなんも親が言うてるわけ。ほんまだれの親戚やねん?みたいな会話。ヘンなウチ。

で、ベートーベンのレコードばっかしかけてて、ピアノ・ソナタも交響曲も協奏曲も弦楽四重奏曲もバイオリンなんちゃらも、まんべんなくずーっと聞かされつづけた。それはそれで、私も楽しかったよ。うん、今日はこの曲なんだーってふつーに聞いてる。

でも、父ちゃんはあんまり「流し聞き」はしてなくて、すごいじーっと聴いとるのよ。

そいで、とくにベートーベンの後期ソナタとかになると、スピーカーの前でうなだれてムンムン聴いてる。


そーゆーのがさ、小学生の子どもにもなんかすごい「気圧される」んだよね。ものすごい「とくべつ」なんだなって。

なんかすごい曲だからしゃべったらあかんなって。「ひゃくじゅういち」とかがかかっているときは、足音も立てたらあかんなって。

まあ、自分が子どものときは「ひゃくじゅういち」って「はじめはめっちゃ怒られてどつかれてしばかれて、でもさいごは『もうええわ、許したる』曲」って思てたけど、あとになってその「ひゃくじゅういち」とは、ベートーベンの最後のピアノ・ソナタの作品番号だとわかって、なるほどね、だから父ちゃんは畏敬の念を込めてムンムン聴いてたんだね。

で、そりゃべつにレコードがかかっているのはかまわないんだけど、その「ベートーベンはとくべつ」感が強すぎた。


なので、私はいまでも、たとえばピアノブロガーさんが「ベートーベンの後期ソナタ、弾きまーす」とか書いているのを見るとギョッとするんだよね。

え? そんなことしてかめへんの?って。

それ、ほんと強いの。

やっぱり子ども時代のときの親の態度って、めちゃくそ影響ありすぎ。もしかして「ベートーベンソナタ・ビリーフ」かね。

いや、それほんとあるわ。「ベートーベンのソナタは、おいそれと弾いてはならない」という掟が自分のなかにありますなあ。


だから、こんどの課題でいきなりソナタ第10番Op.14-2が出されてオタオタしているのよね。「それは、あかんやろ」って。

あのー、堀江さなえさん(ビリーフリセット認定カウンセラー)がブログに書かれていたようになっちゃう。

「いやいやいやいや私なんかとんでもない」って3歩くらいずささーって下がる人いますよね、忍者かな
――――「うれしい」を受け取らない癖|ことほぎ

そうそう、まさしくその「うれしい」を受け取らない、だよね。ほんと、忍者みたいに下がりたくなる。

けど、ふとこう思ったのよ。


あ、もしかしてこのソナタを弾くってことは、「いや、もう受け取ろうよ。すなおによろこんでいいんだよ。もう『呪い』は解けたんだよ」ってことかなあ。

ソナタの楽譜をパッと見たとき、「えーっ?! これはあかん」と思うと同時に、「へえ、二拍子だな」とも思った。

「いろいろヒラヒラ付いてるけど、でもまず二拍子だよね」

あ、もしかして、もうだいじょうぶかも。

私のなかには「さあ、弾いてみようかな」と思っている自分もちゃんといるかも。

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