私は、友だちがいないので、「なんでも話せるひと」といったら、妹しかいない。
まあ、悩みとかをガチンコ解決しようと思ったら、カウンセラーさんを何人も知っているので、「本格的な悩み」だったら、むしろ困らないか。
たとえば、もし自分が「余命なんちゃらの病気」とかにかかったら、まずカウンセリングだねえ。
まず、自分自身と向き合えるようにしてから、そいで、妹に「こうこう、こうなんだよ」って話すかね。たぶん、そうするね。
でも、ふだんなにげない会話をできるひとが、近くにいたら、やっぱりうれしい。たまにごはん食べたりとか。
この表で、「60代独身女性の約1割」が「きょうだいと同居」とわかって、へええって思っていた。
まあ、同居はおたがいしんどいから、「近居」がいいかな。
トシを取ってから、妹がもし近くにいたら、それがいっちゃん楽しいかもね。
で、今日の夜、私がたまたまトイレでキバッていたら、その妹からラインがあった。トイレにスマホを持ち込んでいるので、すぐ返事できたよ。
はじめに、妹が「ぴ?」と訊いているのは、「ピアノ練習中なの?」という意味である。
いやいや、いまは「ぴ」じゃなくて「う」だよ。
いいよー
ちょっと待って
〇〇〇、出してる
どういうわけか、私が「う」のときに、しばしば妹からラインが入る。たいてい応援してくれる。
がんばれ!もう赤ちゃんの頭が見えてるよ!
いやあ、この手の声援ははじめてだったから、あー、涙出るほど笑ったよ。
で、ビデオチャットで、T子ちゃん、どうしたのかなあ?って思っていたら、今日は彼氏さんのことじゃなくて、職場のことだった。
まあ、彼氏さんもタイヘンなひとなんだが、まずは職場問題。
妹は、いまの会社に入ってから、まだ一年もたっていない。
上司の無茶な言動に困っていて……
そう言われたら、もう私が存在する必要ないなって思う。
妹の言う「存在する必要ない」って、マジでほんまに「そっち」行きたがるのよね。
ちょっとタンマ。
まあ、ウチの親が、かなりややこしいひとたちだったから、われわれはタイヘンなのさ。
上司のひと、T子ちゃんに直接、そう言ったの?
いや、〇〇さんを通してなんだけど。
いちど、直接、上司のひととサシで話してみたらどうかな?
う~ん、いまはタイミングも悪いし。
それと、私の悪い噂ばかり流されていて。
それは、ほんとうのことじゃないんでしょ?
そうだよ。まったくウソだよ。
じゃあ、『それはウソです』って、ちょっとずつ伝えてみたら?
いやあ、いまさらだれも信じてくれないよ。
う~ん、「なんで、言えないのかな?」って、私は思ってしまった。
「言いたいことがあっても言えない」って、
前にもあったのかなあ?
それはもう、ずーっとそうだよ。
ふうん。
それはね。
「言ってしまう」と、「もっと悪いことになるのが怖い」からなの。
そのとき、私はものすごく衝撃を受けた。
ああ、ああ、それは、その恐れはものすごくよくわかる!
ああ、そうだよねえ。
いま以上に悪くなるのは、怖いよねえ……
T子ちゃんの気もちは、すごくわかるなあ……
いや、ほんと、私もそうだ。
「もうこれ以上、傷つきたくない」という思いが、どれほど強いか!
だからこそ、ああそうだ、私はいま、ふたたび「引きこもり」なんだよ。
それでね。
妹の気もちが、はじめてわかったんだ。
逆に、これまでは、妹のほんとうの気もちを、ちっともわかっていなかった。ごめんな、T子ちゃん。
「言いたいことが言えない」のは、私もまったくおなじだよ。
そして、「言いたいことが言えないT子ちゃん」を見て、いつもイライラしていたのは、じつは「自分自身にイライラしていたから」だった!
ごめんごめんごめんごめん!
ほんま、絵に描いたような「投影」をしていて、T子ちゃん、ごめん~~~っ!
きっとね、「言いたいことが言えない」ウチに育ったからだよね。
でも、妹にカウンセリングっぽいことをしようとは、もう思わない。
自然な傾聴はちょっとしてみるけど、妹自身は「カウンセリング、受けようと思わない」と前から言っているから、もうおすすめもしない。
そういうのは、「妹の領域に踏み込むこと」だから、もうやらない。
妹の職場、「愛とかやさしさ」に欠けたひとが多いみたい。
ちょっと変わった会社でね。「愛を捨てないといけない会社」なのよ。
そうなのよねえ。そういう仕事も、必要なんだよね。
現に「ぜったい必要とされている会社」なんだよ。
根本裕幸さん(カウンセラー/作家)が、以前こう言っておられた。
すでにもう、愛情たっぷりの家庭ですか?
それとも、まったく愛のない、飢え乾いた家庭ですか?
答えは、あきらかですね。
「愛のない家庭」に生まれるのです。
その家庭に「愛を与えるために」、その子は生まれるのです。
だったらね。
妹もね。
その会社に「愛を与えるために」、入社したのかもしれないね。
彼女は、愛に満ちあふれている女性だからさ。
神サマがさ、「ココ、愛、足らんな。足しとこ」って、ソコへT子ちゃんを、ポトンって落っことしたのかもしれないね。