ピアノ、ウマくなりたい? それともうつくしく響かせたい?

「キレいに鳴らしたいよね」という文字と、「くわえた糸をはじこうとしている少年」のイラスト 音楽

以前、心臓の病気を持っていて、わりとめんどくさかった。

それは「頻脈発作」で、いきなり脈が速くなり、しばらく経つと突然ふつうに戻る。

まあ、「死なない」ということで、ずっと放っていた。

二十代後半ごろかな、その発作中の心電図を撮ってもらって、「WPW症候群だね」とお医者さんが言っていた。

当時は、ペースメーカー埋め込みしか治療法がなく、でも「べつに死なないから」となにもしないことになった。

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けど、頻脈中はしんどいんですわ。

まあ、かろうじて立っていられるけど、ほんまは横になっていたい。

う~ん、どのぐらいのしんどさかな?

「立て続けに起こる激しいしゃっくり」みたいな感じかのう。

そのぐらいシンボウできるやろ?と言われたら、まあ、たしかに。

でも頻脈がはじまってしまうと、胸苦しくてなんにもしたくなくなる。

発作の頻度は2~3日に一度ぐらい。

たいてい1時間以内には収まる。運が悪いと4~5時間かかる。

なんか中途半端な症状だ。

ペースメーカーを入れたら入れたで、そのころはまだ、数年ごとに取り換える必要があった。

そこまでしたくない。




そのうち、発作前に「自分で止める方法」を発見した。

発作が起こる直前、脈が「ととっ」となる。

「とっとっとっとっ」と打っている脈が、急に「ととっ」になる。

その「ととっ」の直後、間髪入れずに、心臓あたりに「ふんっ!」と鋭く力を込めると、発作が起こらないで済む。

その代わり、つねに脈をウォッチしていないとダメだ。

すっげえわずらわしいものの、しかしいったん発作がはじまって、いつ止まるかわからん胸苦しさのほうがタイヘン。

だから、いつも臨戦態勢で、「ととっ」が来たら、すかさず「ふんっ!」と体の深部を操って、発作を未然に防ぐことに熱中した。




まあ、ひととしゃべっているときに、「ととっ」が来ると、止め損ねて延々はじまっちゃったとか失敗するけど。

そうこうしているうちに、医学が進歩して、このタイプの不整脈を治せる新しい治療法ができた。

カテーテルアブレーションという治療だ。

足の付け根の太い動脈から、カテーテルを入れ、心臓のなかで操作して、根本的に不整脈を治せるようになった。

2011年、49才のときにその治療を受けて、頻脈発作はまったく起きなくなった。

ありがたいこってす。

なので、もう久しく、そんな「体の奥の、よくわからん筋肉を操るワザ」なんて使っていなかった。




ところが、だ。

▼モーツァルト:ピアノ・ソナタ第4番K.282 第1楽章│最後の音

モーツァルト:ピアノ・ソナタ第4番K.282 第1楽章 変ホ長調の楽譜、36小節(一番最後の小節)

モーツァルト:ピアノ・ソナタ第4番K.282 第1楽章 変ホ長調、36小節(一番最後の小節)

この「最後の音」が、怖くてたまらんのよ。

だって「最弱音」でしょ?

「音抜け」の瀬戸際で、恐怖におののくわけよ。

だから、その前の音、右手の「ファ」を伸ばしているとき、ずーっと恐怖にあおられているのよね。

ふぁ~~~(どうしよ?! どうしよ?! つぎ鳴らなかったらどうしよっ?!)




そしたら、つぎの「ミ」を鳴らす直前、鎖骨の下あたりを伸ばすように「くんっ!」とすると、成功率が上がることに気がついた。

だから、

ふぁ~~~(どうしよ?! どうしよ?!)~~~(くんっ!)

で、まあ、3割ぐらいなんとかなった。

しかしねえ、せっかくこんなにキレいな終わりなのに、「くんっ!」はいかがかね?

「くんっ!」は、ちょうど頻脈発作を事前に止める「ふんっ!」にひじょうによく似ている。

そんなの、こんな天国的にうつくしい音楽の最後に、「くんっ!」って発作止めるってどうなん?

なので、こないだのレッスンのとき、あらためて先生にお尋ねしたのだ。

「あのう、このいちばん最後の音、コツというか、なんというか、いやあそのう、やっぱりコツみたいなものがあったら、もう一度教えていただけませんか?」

それまでにも、何度かくわしく説明してもらってはいたが、う~ん、そうだね、私の「くんっ!」はあまりにも非音楽的すぎて、じゃあ、先生は、そうではないなにか「秘法」をお持ちなのか?




先生は、ゆったりと両手をかまえて、「まず、ファ~で、じゅうぶん力を抜いて、ほどいておきましょう」

そして、まろやかな最弱音をふんわり響かせた。

ほんとかすかな音が、残り香のようにふぅっと漂って消えていく。

何度も実演していただいた。

腕も指も、そのどこを見ても、音楽のうつくしさにぴったり適合していて、まったく齟齬がない。

当たり前だが、「くんっ!」も「ふんっ!」も、ぜんぜんない。

なんかどこか「ミョーな筋」とか引っ張らなくても、ふわぁっと着地できるのが正当なやりかたなんだね。

私も弾いてみたが、なかなかうまく弾けない。

最悪の音抜けになったり、大きな音がガツンと出たり。

何回もやってみて、その都度、先生に微調整してもらったり、もう一度お手本演奏していただいたり。




でもねえ、そうそう、こういう「うつくしさのマネ」をするのが、ものすごく楽しいよねえ。

やっぱり「くんっ!」も「ふんっ!」もありえへんな、とか。邪道。

弾いたつぎの「指を鍵盤から取る」やりかたも、あらためてこんなにすごいんだな、とか。

レッスンも回数を重ねると、つい当たり前みたいに思っていたけど、いつも「弦をうつくしく鳴らす方法」を教えてもらっているんだなあ。

それって、やっぱり「ウマく弾く」とちょっとちがう。

「ウマく弾く」というより、「どうしたらうつくしく響くか?」がいちばんかな、そうだよね。

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