ピアノのレッスン中、先生は1時間のあいだ、みっしりご指導してくださるため、お話がそれたり、余分だったりということが、まずない。
で、こないだレッスンの際、先生が「バッハのブランデンブルク協奏曲をご存じですか? あるいはヘンデルの合奏協奏曲」とおっしゃる。
え? は?って思ったけど、とっさに「ヘンデルは知りません」と答えた。
すると先生は「では、合奏協奏曲がいいでしょう。この曲(バッハ:フランス組曲第4番 エール)とおなじようなタイプの曲がたくさんありますよ」と言われた。
そのときの会話は、それでおしまい。
しかし、え? どうして、そういうお話になったのっ?!
と、あとで、ものすごく気になったのは、じつは、バッハのブランデンブルク協奏曲、おもくそ好きだったから。
なんか恥ずかしくて、ブランデンブルク協奏曲の「ブ」すら、なにも言えなかった。
だから、唐突に「ヘンデルは知りません」という回答になったわけ。
ブランデンブルク協奏曲は、中学生のとき、どハマりして、底が抜けるほど聞いたのよ。
ラジオ番組「バロック音楽のたのしみ」で、服部幸三さんの解説で、はああ、ものすっごく好きだった。
カセットに録音して、テープ伸びるんじゃねーのっ?!っちゅーくらい、繰り返し繰り返し聞きまくって、う~ん、この6曲のうち、どれがいっちゃん好きかなあ、あれもこれも捨てがたい、う~ん、けど、やっぱり6番がええかなっ?とか、やってたわ。
▼バッハ:ブランデンブルク協奏曲 第6番
ブランデンブルク協奏曲は、ぜんぶで6曲あって、そのどれもがとても明るくてうつくしくて、浮き立つように楽しいのよねえ。
ただ、どれがいっちゃん好きか?というと、やっぱりこの6番のタカタカタカタカと刻むリズムが大好きで。
そいで、テーマが、まるで空からつぎつぎと降ってくる花びらみたいに優雅で、ああ、やっぱしカノンとかフーガは、すごくしあわせになれるなあって。
で、私ってつくづく「タカタカタカタカ」が好きだよね、と再認識。
そしたら、先生が「ブランデンブルク協奏曲は……」ってお話を持ち出されたのは、はれ? もしかして私の「タカタカ好き」がおわかりだったからかね?
▼バッハ:フランス組曲第4番 エール
↑この曲も、タカタカタカタカ、タカタカタントンで、はは、大好きで、だいぶん調子こいてやったから、あ、やっぱり、先生にわかったのかな。
いずれにしても、他人から「ブランデンブルク協奏曲」という単語を聞いたのは、生まれてはじめて。
いやあ、ほんと、服部幸三さん以外から聞いたのが、生まれてはじめて。
いやもう、あれから45年経つけど、そうか、そうなのか、いまになってブランデンブルク協奏曲か。
ウチの親は、まったくバッハを聞かなくて、だから、私はラジオでバッハをはじめて知ったのよ。
服部幸三さんのバッハ愛にあふれる語り口も、ほんと魅力的だったねえ。
そういえば、「私はバッハが好き」ということ、先生に話したこともなくて。
ちょっとレッスンでは「あれが好き、これが好き」なんて軽々しく言えない。
まあ、バッハはずっと課題に出るから、べつに困らないし。
でも、あらためて、いまバッハをこうして自分で弾けるうれしさがこみ上げてくる。
バッハねえ、合唱でロ短調ミサ曲歌ったときもうれしかったよねえ。(とちゅうで「音痴」指摘でとんずらしたが)
けど、いまひとりで、好きなようにピアノで練習できるほうが、もっとうれしいなあ。
気が済むまで、ああでもないこうでもないって、いじくり回してるの、めちゃんこ楽しいな。
あ、先生おすすめのヘンデル合奏協奏曲も、うわっ、むかしこんなんばっかり聞いてたって、うなだれてしまった。
▼ヘンデル:合奏協奏曲
「バロック音楽のたのしみ」って番組、こんなんばっかりだった、ほんと。
まあ、いま聞いても、自分はこういうの、やっぱり好きだなあ。
中学生のころの好みって、けっこう「自分のホンネ」に近くて、そこからあんまり変わらないみたいだねえ。