そもそもこんどの「家賃18,000円アパート」のオーナーさんは法人だった。
だもんで、その会社に「流し、詰まっちゃって~」と電話したら、
「管理会社から、折り返しご連絡差し上げます」とのこと。
そしたら、ものの10分も経たないうちに、その管理会社から電話が入る。
私が状況を説明すると、
「すぐに水道会社からお伺いします」と、非常にテキパキ手慣れた応答が返ってきた。
その管理会社の名前を検索してみると、賃貸管理専門の会社だとわかる。
はああ、なるほど、だからこんなにスムーズにコトが運ぶのかっ!
ついこないだまで住んでいた「トラブルてんこ盛り一戸建て」と、あまりにも違いすぎて、逆にとまどったよ。
やがて水道屋さん二人が到着。
ちょっと水を流して詰まりを確認すると、二人で流し台をよっこらしょと持ち上げて、流しそのものを外してしまった。
へえ、アレって持ち上げるだけで、カンタンに外れるモンなんだ!
そのあとは、いろんな管だの道具だの、下水管に突っ込んで、ゴウゴウ作業してくれる。
30分ほどで、詰まりは解消。
水道屋さん「古いんで、どうしても詰まりやすいんですよ。人間の血管といっしょ」
そして、ちょっとでも流れやすいように、下水パイプの位置そのものを、穴を開けなおして移動させた。
二人のうち、お一人は相当ベテラン風で、ムダのない動きで、的確に作業をキメていく。
そばで見ていて、スゴく心地いい。
仕上げに、パイプのつなぎ目を、ビニールテープで巻いていくのだけど、その重なり具合が均等にうつくしく、しかも、最後の部分は裏側にもってきて、手前から見えないようにするというキメ細かさ。
私が思わず「キレいですねえ!」と言うと、ベテラン水道屋さんは、ニッと笑顔を見せてくれた。
いいねえ、職人技って。
というわけで、流しの詰まりも、その日のうちに直ってしまい、とくに何の不満もない快適アパートになったのだ。
しかし、平和は長くつづかない。
新居アパートに引っ越してから6日目。
ふたたび、旧居一戸建ての、あの「エキサイト大家さん」から電話がかかってきた。
あたしゃ、スマホの発信者名を見て、当然ゲンナリしたが、出ないわけにもいかない。
しかたなく応答すると、
「振込、まだしとらんな」と、大家さんのダミ声が響く。
私「あのう、違約金はお振込みしましたが」
「ちゃうちゃう、47万6千円言うたやろ?」
「…………」
「はよ、してや」
「……いや、それはちょっと……」
「なにぃっ?!」
「はあ、しかし契約書には……」
「あんた、書類がどうとか、そんなんわかっとるがな」
あ、そうなんだ。
「ちゃうで。
気もちのモンダイや、気もち。
ワシの気もちはわかるやろ?」
なるほど。
思わず「あ、はい」と答える私。
「よっしゃ、ほんなら、はよ振り込んでくれや」
「いやあ、そのう、もう他に引っ越してるんですよ」
「はああ?!
おまえ、もう出ていったんかっ?」
「はい」
「おい、いまの住所言え!」
「は、はい」
まあ、隠すのも怖いんで、私は引っ越し先の住所をふつうに伝えた。
すると、大家さんは「奇妙な提案」を話しはじめた!