昨日は、母のサ高住から「荷物だけ」を運ぶ引っ越しだった。
「母ちゃん本体」は、一昨日に新居へ「搬入済み」。
新居では昼ご飯まで、私といっしょに食べて、あとは母ひとりでお留守番。
母は携帯電話を持っていないし、固定電話もまだつながっていない。
だから、留守中に母になにかがあっても、母はだれにも連絡できない状態だ。
じつは、サ高住に入居している間でも、母は一度ころんでしまい、床から起き上がれなかったらしい。
母「ころんだら、そのまま動けないのよ。
緊急コールのボタンまで、すごく遠くて届かないし。
そのうちだれかが来ると思って、そこに寝てたの。
ほっぺたが冷たかった」
結局、1時間ほどで、たまたまヘルパーさんが発見してくれて、起こしてもらったという。
その話を電話で聞いたとき、えーっ! 89歳ともなると、そこまで動けなくなるのか?!と仰天した。
だもんで、母ひとり残して、私が引っ越しに立ち会うのは不安だったが、ま、しかたなく現場に向かう。
さすがに引っ越しともなれば「ヘンなサ高住」であっても、私も引っ越しスタッフさんも、ふつーに中に入れてくれた。
ただし、エレベーターは利用者さんが最優先だから、引っ越し荷物はなかなか運び出せない。
スタッフさん3人は、段ボールへの箱詰めも含めて、テキパキと作業してくれるのに、出来上がった箱が廊下に溜まっていく。
階下にあるデイサービスが終わる時間帯は、利用者さんが1台しかないエレベーターを、順に使って自室へ戻る。
しかもサ高住のヘルパーさんがひとりずつ付き添うし、シルバーカーを押しているヒトもいるし、一度に4人しか乗ることができない。
あと、サ高住の出入り口は一ヵ所しかなく、その開閉のつど、ロックがかかり、引っ越し屋さんが出入りするときは、母の部屋に呼び出しがかかり、私がロックを解除しないといけない。
けっこうしんどかったわ、ふう。
とはいえ、私がすることといえば、掃除ぐらいだった。
引っ越しにともなう掃除は、自分で何回も経験しているが、げっ、流しの排水口を見て驚愕!
ミニキッチンの排水口で、細長いプラスチックのゴミ受けが付いているヤツだけど、覗いたら、ピカピカだった。
へ?!っと思いながら、そいつを引き出して、裏を見てみたら、まるで新品のようにピカピカ。
母ちゃんがキレイ好きなのは知っていたけど、こんなに高齢になっても、毎日排水口まで掃除していたなんて、あきれかえってしまった。
流しの周辺も洗面所も、曇りひとつなくぜんぶピカピカ。
う~ん、こういう几帳面さというか、自分に課しているレベルの高さというか、そんなのが、排水口にもあらわれているなあ。
まあ、そういうのが、子どもに向けられると、うん、子どもによってはタイヘンなのだ。
しかし、いまピカピカの排水口を見ていると、むしろ母の「健気さ」のほうが強く感じられる。
母は、自分の子どもがふたりとも、母に対して放ったらかしであっても、決して捨て鉢にならず、「自分にとって快適な環境を、自分で維持しよう」と、日々ていねいに暮らしていたのだ。
それは、だらしない私にとって、ぜひ見習いたいと思うりっぱな心がけだった。