本日、母は90歳になった。
じつは、昨日私が、
「89歳最後の日だよ。どんな気分?」と尋ねると、
「ヤだよ。ぜったいヤだ」
「80代と90代じゃ、ぜんぜんちがう。
まっぴらごめんだ、うれしくもない」と母は口をとがらせ、フテくされていた。
「あ、そう」と私。
今朝、起きてすぐ、母に向かって、
「90歳のお誕生日おめでとう」と言うと、母は「ありがとうね」とにっこりした。
私「お昼ごはんは、ケーキにしようね」
母「うん、そうしたかった」
じつは、新居のマンションの一角に、ケーキ屋さんがテナントとして入っていた。
私は、とくだん甘いモノに興味がないので、お店のなかをのぞいたこともなかった。
しかし、母ちゃんは甘いモン大好き。
言っとくけど、糖尿病なのだが、もうねえ、いまさら好きなモン制限してもね。
なので、引っ越してからはじめて、ケーキ屋さんを訪れ、ケーキぜんぶの写真を撮り、ソレを母に見せる。
母ちゃんは10分以上悩んでいたが、私はメンドくさくて放っておいた。
やっと決まったので、買いに行って、チョコレートケーキを2個買って帰る。
そしたら、午前11時半に、お花屋さんが「バラのアレンジメント」を届けに来た。
私が前もって、「花キューピット」というフラワーギフトサイトで頼んでおいたヤツ。
「花キューピット」というサイトは、そこで注文すると、近隣のお花屋さんが、お花を直接届けてくれる。
なんつーか「近所のお花屋さん」をちょっと応援しているような気分でうれしい。
今日も、宅配とかじゃなく、ほんとにお花屋さんのおじさんが、大切そうにアレンジメントを抱えて持ってきてくれた。
うん、なんかうれしい。
そして、もちろん母ちゃんも大喜び。
ケーキとお花を前にしたら、
母「あ、90歳になっても、うれしくなったよ」
しめしめ。
で、母が90歳になったのを機会に、私はもうひとつ「無形のプレゼント」をしようと思っていた。
それは「母の話をよく聞く」ということだ。
も少し正確に言うと、「母が、同じ話を何度しても『まるで、はじめて聞くかのように』聞くフリをする」ということ。
コレなあ、じつは少々悩んでいたのだ。
ま、「年寄りの繰り言」というけど、母も「同じ話の繰り返し」が多い。
ただ、一日のうちに同じ話が何度も出るほどの頻度ではない。
いまのところ、1~2週間に1回ほどのサイクルかね。
よく出てくるのは、サ高住の入居者さんやスタッフさんの話。
それも、そのヒトたちに困らされた話が多く、ちょうど「同じ話ばかり繰り返すお友だちに困った」話もリフレインされる。
ソレを何度も聞かされる私の身にもなってくれいっ!
などと思っていたが、まあね、話したいんだったら、ま、いいか。
ちなみに、よくよく聴いていると、べつにグチばかりでもなく、うれしかったり楽しかった話も繰り返し話している。
それに、母自身は「ただしゃべりたいだけ」で、私のリアクションにはそれほど関心がない。
だったら、もう、好きなようにしゃべりなはれ。
なので私は「ふんふん、ふうん、ふふ~ん」とか、たまに母の言うコトバを拾って、「うん、〇〇だねえ」とうなづいたりとか。
というわけで、90歳になったのを機に、母ちゃんがなんべんおんなじ話をしても、ふふふ~んとナマ返事して、聞き流すことにしたのさ。