サ高住に入所していた母を、在宅介護にしたのは、どうしてなのか?
それは、私自身が深く反省したからだ。
これまで母を粗略にあつかっていたのを、とても後悔した。
せめて、いまからでも、母に少しでもしあわせになって欲しい。
たいしたことはできないけど。
という思いで、今年7月から、母といっしょに新しい生活をはじめた。
それでね。
いま痛感しているのだが、ほんとね、私にできることって「たいしたことない」んだよ。
母の「幸福度、満足度」を上げたいと、考えていたけど、それさあ、基本的にデキないんだね。
そういうモンなんだね。
たとえば、「サ高住暮らし → 在宅」となったら、ぐーっと満足度が上がる。
なーんて、私はあさはかにも予想していたんだが、それはみごとにはずれた。
現在、母は、
「サ高住にいたときより、ココに来てからのほうが、ずっと悪い」という。
じつは、母自身も、サ高住暮らしにヘキエキしていて、退所すれば、もっと楽しい生活になると期待していた。
けれども、じっさいに引っ越してきたら、楽しいコトなんてほぼなし。
むしろ、苦痛なこと、不愉快なことのほうが、グンと増えてしまった。
その最大の要因は、体調不良。
・巻き爪化膿が長引いている。
・転倒したときの打ち身の痛みが治まらない。
・寝付けない。
・内科の病気が増えてストレスになっている。
・歩くのがとても困難。
こういったことは、まあ、サ高住にそのまま入所していても、起こったかもしれない。
しかし、すべて転居後に生じたのは事実。
はっきりした因果関係はないけど、母の実感として、
「引っ越してから、ロクなことがなくて、どんどん不幸になっている」のだ。
そして、引っ越し先のマンションも、具合が悪かった。
・そもそも住みたくない地域だった。
・上の階の騒音で寝付けない。
・管理人が高圧的で非常識。
・バリアフリーではない。
・1階なので眺望がまったくない。
・暑いのがイヤで北側の部屋にしてみたら、秋以降寒すぎる。
うわっ、たしかにいいトコなんてゼロだねえ。
かろうじて、ゆいいつの在宅メリットだったのは、「好きなモノを食べられる」こと。
だが、このメリットも「食欲不振」という壁にブチあたり、消滅してしまったのだ。
マンション選びを失敗したのは、私のミスだ。
けれども、仮にもし、母の希望を満たすマンションに、もう一度引っ越したとする。
そういう話も、母との話し合いで何度も出ていた。
でもね。
いいマンションに引っ越したとしても、「体調不良」はどうだろう?
母は、すでに90歳。
身体のあちこちがほころびてくるのは、老化のためとも考えられる。
結局、母をいちばん苦しめているのは「老い」なんだろう。
その「老い」に対して、私はなにもデキることがない。当たり前だが。
で、よくわかったよ。
「サ高住 → 在宅」の効果というのは、微々たるモンだってね。
家族が介護したからって、要介護者は、とくに目立ってしあわせにならない。
だって、心身の老いは、おかまいなく進行していくのだから。
本人は、老いや病気の恐怖、不安が非常に強い。
そして、家族が介護したからといって、それがやわらぐわけでもない。
そういったことが、ストンと腑に落ちた。
ああ、そうなんだ。
私にデキるのは、「見守ること」だけなんだなあ。