母が退院して、1ヵ月と10日が過ぎた。
退院当日、ウチに帰ってきてから、母は入院まえのように、自分の定位置である大きなイスに腰かけていた。
けれども、しばらくすると、
「入院の疲れが残っていてしんどい」と言って、ベッドに横になった。
それっきり「ベッドが定位置」になって、いまに至る。
さいしょのうちは、ベッドに腰かけることもしていたが、やっぱり、寝ているほうが圧倒的にラクだそうで、
母「ああ、こうやって寝ているのが、いちばんしあわせ♪」とニコニコしている。
一日の大半を寝て過ごしていて、起きて動くのはトイレのみ。
なので、たぶんもう「寝たきり」なんだと思うけど、ええと、寝たきりの定義ってなんなん?
出典 廃用症候群とは何?
ウチの母は「起き上がれない状態」というよりも、
「寝てるとラクチン! ああ、しあわせ♪」という状態ですねん。
ハタから見ていると、キゲンよくぷーぷー寝ていて、たまにトイレへ行くときは、自分で起き上がり、コールボタンを押して私を待っている。
なんだか楽しそうに「寝たきりライフ」を満喫している。
まあ、ふとんを大きくかけたりめくったり、というのも自力ではデキないから、都度介助する。
いまのところ、寝ころがるのはデキて、ただまっすぐにはコロがれないので、調整は必要。
ずっと寝ていて退屈しないか?と心配しているが、
母「ちっとも退屈じゃないよ。寝ていても目が覚めていたら、いろいろ考えているし」
私「テレビ、あんなに好きだったでしょ?」
母「いつかは見たいけど、いまはいいの」
そうそう、これも心配だった人口栄養の量だけど、母のほうがちょい妥協してくれて、
規定量の8割ぐらいを注入している。
次回の訪問診療のときに、お医者さんにちゃんと訊かないといけないが、まあとりあえず8割。
思い返すと、退院して10日ほどは、母自身が、
「こんなに寝てばかりじゃいけない、ボケそうで怖い」とか言っていた。
しかしそのうち、寝たきりの心地よさに逆らえず、いまでは「寝る」のが日課になった。
いちどだけ、母がこんなことを洩らした。
「もしかして、寝てばっかりいるおばあさんって、こんなふうにラクで気もちいいから、寝ているのかしら?」
ふふ~ん、なかなか穿った発言じゃのう、と私は感心した。
一般的に「寝たきり」ということばには、ネガティブなイメージがつきまとう。
ま、あんまりよろしくないというか、寝たきりよりは、寝たきりじゃないほうが「良い」みたいな。
けれども、母の実感である「ラクで気もちいい」のなら、「寝たきり」を選んでもちっともかまわないかも。
なんとなく、起きて座ったり、テレビを見られたりというのが「良い状態」と、私も思い込んでいたが、まあ、寝ていて「ラクで気もちいい」なら、それがいちばんだ。