「ふつうの行事」が苦手だ。
それって、若干「スネ」が入っているせいでもあった。
スネてたんだよ。
なんでえ、クリスマスが、ケッ、とか、正月のなにがめでたいんじゃとか。
というふうに明瞭にスネていたのは、1996年(33才)まで。
1997年以降は「山」がメンドー見てくれるようになった。
正月休みは、どこかの山中でテント張って、元旦に目が覚めたら、びっしり霜でおおわれたテントを見上げるのが恒例になった。
まあ、本格的な冬山は1回だけ。
北アルプスの蝶ヶ岳(ちょうがたけ/標高2,677m)の直下で、テント2泊したことがある。
気温はマイナス20度。
すべてのモノがあっという間に凍り付く。
登山靴も凍るので、寝袋に入れて、靴といっしょに寝る。
けっこう雪が降ってきて、夜中にスコップで雪かきしないと、テントがつぶれる。
このときは、28kgの荷物を担いで、さすがにいっちゃん重たかった。
一眼レフのカメラと三脚も持って行ってて、はあ、いま思うと、よくまあそんだけ体力あったなあ。
蝶ヶ岳の山頂も踏めた。
頂上付近は暴風で吹き飛ばされそうだった。
帰りにテント撤収しようにも、凍り付いていて、これ2時間以上かかったかな。
なんか冬になると、いつも雪まみれになっていた。
高野山から出発して、熊野古道│小辺路(こへち)を南下し、熊野本宮大社まで70kmたどるとか。
とちゅう伯母子岳(おばこだけ/標高1,344m)付近は、腰ぐらいまで雪があって、おもくそヤバかった。
熊野古道ぐらい正月ならだれか歩いているかと思ったら、ぜんぜん。
だれもおらん。
2泊目│伯母子峠避難小屋泊。
3泊目│適地がなくて、登山道の真ん中でテント泊。
こんな正月がデフォルト。
様相が変わったのは、2年前からで、ピアノの発表会が1月の恒例になった。
するとだな。
正月はピアノ漬けになった。
まあ、しごく安全ではある。
しかし、ぬくぬく「安全」でいられるのは、せいぜい正月までで、発表会当日はちっとも「安全」じゃなくなった。
当日、自分の演奏がいつ崩壊するか、ハラハラしっぱなしなのだ。
「いつ雪崩が起きてもおかしくない」とか「つねに滑落の危険にされされる」とか、まさにそういう気分を、イヤというほど味わうことになってしまった。
「危険の可能性」でいえば、山で遭難するより、ピアノが崩壊する確率のほうが、はるかに高い。
いちおう練習してるんだけどね。
モーツァルトソナタK282なんか、9月29日からやってるけど、いやあ、いったいいつになったら盤石になるんだろう?
もっとちゃんとやり直そうと思って、昨日からあらためて「片手練習」をはじめた。
はは、片手でも弾けない、できない。暗譜できていない。
そりゃ、両手で弾けるわけねーじゃん。
今日は、バッハ:フランス組曲第3番 サラバンドも、ちみちみ片手練習。
ああっ、やっぱり左手、暗譜できてねーじゃん!
けど、左手だけゆっくりていねいにさらっていたら、なるほどねえ、ココは切ったほうがいいなとか、うんと小さくしようとか、いろいろ発見があった。いまごろ。
それに「左手だけの旋律」は、やっぱり新鮮できれいだった。
モーツァルトもそうだったが、バッハですら「左手を聴けていない」のがバレバレ。
だから、いいのか悪いのか知らんけど、すごく新鮮でおもしろい。
しかし、勝手におもしろがってて、こんな調子で発表会に間に合うのかねえ?
めざしどころは「自動モード」なんだよ。
さいしょから終わりまで、自動でぴゃーっと指が弾いてくれるとうれしいんだが、それ、もう不可能かねえ?
いやいや、こんどの正月、スネるヒマもなく、せっせと練習したら少しはマシになるか。