深夜に玄関をガンガン叩かれた「あまりにも意外すぎる理由」│借金を返せなくなった恥ずかしい真相│その18

音楽

私は恐怖に凍り付きそうになった。

しかし、玄関扉をガンガン叩く音とともに、

「あんたっ! あんたっ! ないやんかっ?! どしたんっ?!」という女性の声が聞こえてきた。

うわっ! ゴミ屋敷の女性だよっ!

まあ、でも正体がわかってホッとした。

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私はあわてて、玄関の灯りスイッチを入れて、鍵を外して扉を開けた。

見ると、あの女性が悲壮な顔つきで立っている。

「おねえさん、どしたんですか?

もう遅い時間ですよ」と私は言った。

私が引っ越して来てから、女性は何度か私のウチにやってきていた。

私よりは二十歳ほど若い女性、といっても四十代だと思うけど、私は彼女のことを「おねえさん」と呼んでいた。




「あんたっ! ないやんっ?! 自転車ないやん?! どしたん?! 盗られた?!」

ああ……、そっかー、私の自転車のことか。

いや、引っ越してきたとき、自分の自転車をウチの前に置いておいた。

しかし、風かなんかで横倒しになったので、今日の昼間、ウチの南側の細いスキマへ、自転車を移動させたのだった。

「おねえさん、自転車ね、置く場所変えたんですよ」と、私はゆっくりと、女性を落ち着かせるように話した。

「え? そうなん? どこにあるん?」

「ホラ、……、こっちの奥にあるでしょ? 暗いから見えにくいけど」

女性は一所懸命のぞきこんでいたが、

「あ、ホンマ、あるわ、よかった!

あたし、盗られたんか思ってん」と言って、ニッコリした。

その笑顔を見ると、私はなんとも言えない気もちに襲われた。

「おねえさん、心配してくれてありがとね」

「そうや。

あ、それとな、あんた、ゴミいつでも捨てれる場所あるから、教えたるわ」

そう言って、女性が歩き出したので、私は戸締りをして後をついていった。

いっしょに歩きながら、女性は機嫌よく大きな声でしゃべっていた。

夜も更けて、だれもいない暗い道を、このふしぎな女性と歩いているのが、少し心地よかった。




しばらく行くと、細い水路の脇に、ゴミやガラクタが山積みになっている場所に来た。

女性は「ココや。ココやったら、いつでもなんぼでも捨てれるで」とうれしそうに言う。

「ああ、そうやね。教えてくれてありがとね」

ふたりして、また同じ道を戻る。

私のウチの前まで来ると、私は、

「じゃあね、ありがとね、おやすみなさい」と言った。

女性はもう少し話したそうだったが、

「うん、おやすみ、またな」と手を上げて、自分のウチに向かっていった。

さて、どうしたものか?

女性が、昼も夜もよくウロウロしているのは、わかっていた。

日中は、息子さんとふたりで、ともに自転車に乗って「空き缶集め」をしている。

女性にとって、自転車はとても大切だから、たぶん私の自転車を日ごろよく見ていたのだろう。

なので、今夜「自転車がない!」と気づいて、すぐ玄関を叩いていたのだ。

ねえ、親切で好意でやってくれていて、それに、いつもニコッと笑顔を見せてくれるからねえ。

だが、私が悩まないといけない相手は、その女性ではなかった。

「その事件」は、別の夜に発覚した。

いよいよ「おまわりさん」に助けを求めないといけないか?

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