母と同居するにあたって、いっちゃん心配だったのは「生活リズムを同じにする」ことだった。
もともと母は、いつも「決まった時刻に起きて、決まった時刻に寝る」几帳面な性格だ。
約7年前、母は「朝7時起床、夜11時就寝」だった。
それなのに、いまは「朝5時起床、夜9時就寝」に繰り上がっていた。
年寄りだからか、いや、7年前からじゅうぶん年寄りなのに、どんどん早寝早起きがヒドくなっていた。
私はといえば、そもそも「寝る時刻が気分次第」なので、起きるのもてんでバラバラ。
それを「朝5時起床、夜9時就寝」に合わせられるか、ちょっと悩んでいたが、意外と徐々に慣れてきた。
まだ寝る時刻が夜10時20分だけど、朝は5時半には起きられる。
でも、母ちゃんは、いったいどうしてそんなにピタッと寝て起きられるのか?
そしたら昨夜、びっくり仰天する出来事があった。
母はスポーツ全般が好きで、テレビもスポーツ番組をよく見ている。
昨日の夜も、母は野球中継を見ていた。
私は、スポーツもテレビも興味がないので、たまにチラチラのぞく程度。
そんな私でも、母が好きな球団は知っているし、野球が「9回までやる」ってのも知っている。
で、たまたま私がチラ見したとき、その野球中継は「9回裏で同点」だった。
おお、エエところやないの?
だのに、母ちゃんはいきなりテレビのスイッチを切ってしまった。
はあ?
母ちゃん「もう8時50分だから、寝る用意する」
はあ?
私「えっ?! 続き見たくないの?」
「ううん、見たいよ。
でも、延長戦まで見たら、9時超えるから、もう止めるよ」
「気にならないの?」
「なるよ。
でも、明日にはわかるよ。
それより、自分が決めたことは守りたいんだよ」
ふうん、スゴいヒトだな!
私は、たぶん生まれてはじめて、母ちゃんの意志の強さに驚いた。
その意志の強さゆえに、毎日規則正しい生活を送れているんだなあ。
なんの努力もしないで「朝5時起床、夜9時就寝」ができているわけじゃない。
「自分は、こういう生活をするんだ」という明確な意志を持っていて、そのためには「ついうっかりダラダラテレビを見る」ことなんて排除しているんだ。
エラいなあ……
ずるずるだらだらユーチューブを見ている私とは、大違いだ。
ちなみに、同居したてのころは、食後にふたりでわりとダラダラしゃべっていた。
しかしいまは、食べ終わると同時に、私が20分タイマーをセットし、それがピピッと鳴ると「お開き」である。
母はあまり動けないが、私はちょこっと家事をしたり、まだまだ引っ越し荷物が散乱しているのを片付けたりで、これは非常に助かっている。
むかしはねえ、母の「すばらしいところ」なんて、ぜんぜん意識していなかった。
けれどもいまは、そういう「感心するところ」がたくさん見えてきて、それをマネしたいなあと思うのよ。
んで、そういうりっぱなヒトと、楽しくいっしょに暮らせてうれしいのよね。