もともとは、母との問題をなんとかしたいと思って、私が心理学に興味を持ったのは二十代後半だった。
母は生い立ちがひどく不幸だった。
母の父、つまり私の母方の祖父は3回結婚したので、母には「お母さん」にあたるヒトが3人いる。
母の実母は、母が6才のときに家出していなくなってしまった。その後、継母1号は母を虐待したのち若死にした。ついで継母2号は母に無関心、のち自殺した。
こういう境遇の女性がコドモを育てると、エラいことになる。
でもまあ、私はずっと長いあいだ、母と私のあいだでなにが起こっているのか、まったくわかっていなかった。
ただ長年、なんとか母との関係をよくしたいと思いつづけており、その解決の糸口が心理学にあるんじゃないかとアタリをつけて、二十代後半には臨床心理学の本をかなりたくさん読んでいた。
でも、当時はまだカウンセリングとかは子どもが対象だったかな。不登校の子ども関連の本とかが多くて、オトナがどうしたらいいか?について、具体的に書かれている本はなかったように思う。
結局、ようやくカウンセラーのN先生に出会えたのは、2014年11月でもう52才になっていた。
いちばんさいしょはセミナーでお会いしたんだけど、そのときの衝撃はいまでもはっきり覚えている。「こ、こんなひとがこの世に存在するなんて!!」と金づちでドタマをぶん殴られたかのようなショックだった。
いやもう、このひとの話は何時間でも何十時間でも何百時間でも聴いていたい!と激烈に思った。
そのぐらいどうしようもなく惹かれるひとって、やっぱり私の人生を激変してくれたねえ。
で、カウンセラーでもあり音楽家でもあるO先生のことは、たまたまO先生のブログを自分で見つけていた。ブログだけでも非常に気になるすばらしいかただった。なによりも音楽家であるだけに、私なんかが僭越なんだけど、芸術についての造詣がとても深いのだ。
そしたら、2年まえにN先生がO先生といっしょにコラボセミナーをするという告知を見て、またまた仰天した。なんと、O先生はN先生のカウンセリングを受けたことがあり、N先生にたいへん感銘を受けておられたとのこと。
おお、そういうことなのね、というわけですぐさま東京のセミナーにすっ飛んでって、O先生にもお会いしたら、またまた「こ、こんなひとがこの世に存在するなんて!!」とぶん殴られたわけ。しかも、O先生はまことにうつくしい女性で、カリスマ性もきわだっている。
うおお、もっとぶん殴られたいぜ!とMっ気のあるオナベの私は、その年のうちにもう2回、O先生のセミナーを受講しに行った。
その後も、N先生のセミナーにひんぱんに通うわ、本もぜんぶ読んで長大な感想文を書くわ、等々、まあ、要するに「ワシはこれからどないして生きたらエエねん?」っちゅう問題に延々とかまけてきた。
N先生にはじめて個人カウンセリングを受けたとき、先生にこう言われた。
「春子さんはね、お母さんとの世界しか知らないんですよ。お母さんと『癒着』しているからね」
そう言われても、当時はなんのことかわからなかった。
どうしたらいいかもわからなくて、ずーっとジタバタしていた。
それでもとにかくもがきつづけていたら、最終的にはO先生にゆだねることになった。
それが、今年3月20日の個人カウンセリングだった。(「今日、私は生まれ変わった」)
いま思うと、アレは「大手術」に匹敵する。
なので、まだまだ体調がすぐれない。精神面の激変にカラダがついていかなくて、ホント、毎日フラフラである。
心臓の不穏さはかなりマシになったけど、早朝覚醒は相変わらずだし、日中も疲労感がずっとつづいている。
今日は、仕事中にとうとう気分が悪くなってしまった。
きっかけは、アタマのなかでバッハが鳴り出して止まらなくなったこと。短調の曲で、なんかいきなりそれに共鳴してしまって、哀しみのカタマリみたいなモノが噴き出てきて、ソレにやられて胸が悪くなった。
こりゃマジでヤバいと思って、隣のパートさんに「すみません、ちょっと気分が悪いのでトイレに行ってきます」と言い捨てて、部屋をすぐに出た。
さいわい戻さずにすんだけど、トイレのなかで涙が止まらなくなってしまった。
でも、おもくそ泣いているうちに気分の悪さはすぐにおさまった。あとは、ただ涙をポロポロこぼしているだけ。
アタマのなかは、ずっとバッハ。
ねえ、どうしたらいいの?
しばらくして仕事場に行くと、みんながとても心配してくれて、今度は休憩室で休むように言われる。
3人で回しているところを、私ひとりが抜けるとすごく迷惑だろうけど、みんなの好意をありがたくいただいて休憩室でぼーっとする。
10分ほどしたら落ち着いたので、また自席にもどって仕事をした。
先輩パートさんが「ほんとにだいじょうぶ?」とか「これは私がやるから、もうなにもしなくていいよ」とか言ってくれる。
そしたら、また涙がこみ上げてきた。
まだまだ「術後」の身なんだろうね。
しばらく安静にしとこ。