あらためて感じたのだが、私はなにをやってもグズである。
いま現在、ふつうのひとの3倍はかかる。ふつう10分でできる仕事は、私がやると30分必要だ。こんなに時間がかかる要因のひとつは、仕事の手順をまったく覚えられないからである。モノの位置すらぜんぶ忘れてしまうので、まず使うモノがどこにあるのか、メモ書きを探すことからはじめないといけない。
しかし、それがメモのどこに書いてあるのかも忘れる。だから、殴り書きのメモを1枚ずつめくって探す時間もかなりかかる。こういう作業が加わるので、じっさいにその仕事をやるまでに10分ぐらい平気で過ぎている。
やはり「記憶に残らない」というのはかなり不便だ。なにかに記録しておかないと次回にできないし、こんどそれをするときにその記録を探す手間も増える。
そしてさらに「慣れない」ってのも相当しんどい。いまのパートは、すでに1年4ヵ月やっているがさっぱり慣れない。いまだにレジを打つのも、毎回はじめてのようでキョトキョトしながらメモを探してぽっつんぽっつん操作している。で、しょっちゅうまちがえる。
こんなに「覚えられない」のは、ババアだからである。(断言) ほんまに老化現象なのだ。
さすがに二十代三十代はここまでヒドくなかった。先輩さんからゆっくりていねいに教えてもらったら、そのあとマネしてデキていた。まあ、そのころはコンピューターを使う仕事もぜんぜんなくて、宛名書きが主な仕事だったから、いまとくらべるとずいぶんわかりやすい作業がほとんどだったね。
私は、「手作業」についてはまだマシなのだ。宛名書いて、切手貼って、ゴム印押して、書類を折って、なかに入れて、封をする、という仕事ばかり長年やっていた。おもしろくねー仕事だなとため息をついていたが、接客よりは向いていた。
それでも、当時若かったにもかかわらず、やはりふつうのひとの2倍はかかった。どんなに急いでもちょうど倍かかって、ああ私はダメだなあと思っていた。宛名書きにかぎらず、ほかのどんな仕事でもちょっきし2倍は必要だった。
それがいまでは3倍かかる。もはや年がら年中「遅い」と叱られている。いつか慣れてデキるようになるかと根拠のない期待をいだいていたが、いや、ぜんぜんダメ、いつまでたっても3倍かかっている。
それで、ハタと気がついた。
ああ、そうか、ひとの何倍もかかるのが「私のふつう」なんだねえって。グズがデフォルトなんだよねえって。
それ、努力で3分の1には決してならないよねえって。
そうそう、「作業指数」みたいな基準があるといいなあ。「知能指数」みたいにね。そういう作業指数みたいなのをハロワで計ってもらってさ、その指数に応じた職を割り振ってくれたらいいのにねえ。そうしてくれたら、こんなにしんどい目に遭わずにすむのにねえ。
けれども、滞ってしまうのは仕事だけではない。それはプライベートもおんなじで、ウチのなかでも人並みに家事がまったくできない。還暦まぢかというのに、料理はゆで玉子しか作れない。洗濯機はかろうじて回せるが、それも半月に1度ぐらいだ。シャワーはこのところ1週間に1度がせいいっぱい。
すぐに汚部屋になってしまって、床可視率はつねに10%ぐらいだ。これでも去年は2回片づけた。
1度目は「ビリーフリセット・リーダーズ講座」の受講生Aちゃんが、ウチに来て自主トレをするというのでムリやりなんとかした。2度目はピアノの調律のとき。でも、調律後すぐに汚部屋に戻ったので、また調律に来てもらえず困っている。
こうして人生を振りかえってみると、ほう、要するに私は「ひとの3分の1」ぐらいしか能力がねーんだなってよくわかった。
だって、こういうのを40年以上やってるんだよ。
それって、いまから努力してデキるようにならねーよなっ?!
それ、「生まれつきデキない」のが自分だよなっ?!
ああ、びっくらこいた。はじめて気がついたわ。
「努力すれば → いつかデキるようになる」と信じていたけど、それはまちがいだった。
そもそも「努力する気もなかった」と、いま気がついた。仕事も家事も片付けも「そのまま野放し」にしていて、べつに私は努力する気すらなかったね。
うむ、「どのぐらい努力できるのか?」ということもまた、生まれつきの能力だと思うな。
私は、もともと人並みの能力がなくて、かつ努力もしたくないのである。
そういうことなら、ああそうか! だれかに助けてもらって、それはけっこう当たり前かなと思いいたった。
私はずーっと働きたくなくて、どっかからゼニが勝手に降ってこないかしか考えていなかったが、それは「能力のない人間」ならべつにそれでかまわない。自分でデキないことを他人に助けてもらおうとするのは、ごく順当である。
だから、これからは「私は、ふつうのひとの3分の1しかデキないんです。どうか助けてください」とすなおに頼めばいいんだなとわかった。
結局いっちゃん問題だったのは、自分が「ふつうよりデキるんや」と他人に対して見栄を張っていたことだった。
そんなふうに「自分の能力より大きく見せよう」とずっとやってるから、他人もわりとカン違いして「アレやれ、コレやれ、もっと早くやれ」と言いつけるのである。
ちゃんと自分が「ふつうの3分の1しかデキない」と自覚して受け入れて、それに応じたマヌケ面を下げていたら、だれもそんなにエラい仕事をやらさないじゃないか!
まあ、つまり、「ふつうよりデキるフリ」をしていたから、こんなにしんどい目をするんだと、ようやく悟ったよ。すいません。