いまから約2年2ヵ月前に、ピアノのレッスンを再開した。57才のときである。
その前にレッスンへ行っていたのは13才が最後だったので、44年ぶりの再開だった。ずいぶんとお久しぶりじゃのう。
で、再開したすぐあと、やっぱりなかなか指が動かなくて苦労した。
「このタイミングでこの音を弾きたい」と思っても、指がついていかないねえ。毎日練習していたら改善されるかと思っていたけど、そうはいかなかった。ずっと動かねえ。
どうして指がうまく動かないのだろうか?
〔原因1〕
練習時間が少ないから。
たぶん、これがいっちゃん大きな原因だ。
平均して2時間弱/日しか練習していない。こんなショボい練習量で、はっきりわかるほどウマくなるわけねーじゃん。
なんでもそうだけど、上達しようと思ったらもっと時間かけないと。
〔原因2〕
「正しい奏法」を習得する努力をおこたっているから。
「奏法」については、先生からとてもていねいに教えてもらっている。
でも、その奏法を本当に自分のものにしたいという意欲が足りねー。
なんとなく「そのうちなんとかなるかー」じゃダメ。
〔原因3〕
ハノンとツェルニーの練習が、極端に少なすぎたから。
一日あたり30分ぐらいしかやっていなかった。
さて、こんなにナマケモノだった私なのだが、今年4月下旬に意識改革が訪れたのだ。
そもそも先生のツェルニーお手本演奏が、いっつもまるで新幹線みたいで、あたしゃママチャリかよ三輪車かよと寒々とした思いにとらわれていた。
でも、あるときハッと気がつきましてな。
あのー、べつにイヤがらせで新幹線通過じゃなくて、ちゃんとご指導のとおり練習したらこう弾けますよ、なんだよねって。
それで、ツェルニー40番の8番をやにわに重点的に練習しはじめた。毎日1時間~1時間半ぐらいはツェルニーに充ててていねいにさらった。
そしたら、まずまず速く弾けるようになったのよ! といっても♩90ぐらいだが。けど、こんなに高速で弾くの、生まれてはじめてで、ほんまコレだれが弾いとんねん?!って思ったわ。
しかも速く、てか軽快かね、弾けるようになったのはツェルニーだけじゃなくて、バッハやモーツァルトソナタまでできるようになってきたのだ。
なんつーか、指の神経の通りがよくなったんちゃう?みたいな感じ。ええと、各指の「独立」した感が強くなってきた。パリパリタカタカトトトトタタタタ、よし!って感じ。
はあ、このぱらんぱらんした指の感覚は、ほんとはじめて味わうなあ。
で、59才にしてようやくツェルニーの威力がわかったのだ。おそかった。でもまあ棺桶入るまえに気がついてよかった。
練習曲ってすげーじゃん!と実感したので、ツェルニーだけではなく、ハノンも練習時間を増やした。これまで8分/日とかナメ腐っておったのだが、30分/日と大幅に増加した。
そしたらさあ、あの「いつも『昨日よりヘタになっている』現象」が、ハノンの弾き終わりには改善されると判明した。
「昨日よりヘタになっている」ってのは、毎度のことなんだが、練習をはじめるとどの曲も必ず「昨日の終わりよりヘタになっている」ことだ。
これって、たぶんトシだからじゃねーの? 一晩寝ているうちにズリ下がってるんだよね。朝起きたら、昨日よりヘタになっててハラが立つ。
ところが、だ。このズリ下がり現象も、ハノン30分でかなり回復するとわかったのだ。そんなふうにまずハノンをやってから曲の練習に入れば、以前ほどヘタクソに悩まされなくなった。
ハノン、あんたもすげーじゃん。
てか、自分が悪いだけか。すなおじゃなかった。そう、ソコ。
ハノンもツェルニーも課題としてきちんと出されているのに、とっつも身を入れて練習していなかったオノレがいかんのだ。
指が思うように動かないことは、ハノンとツェルニーだけでもかなり改善されるんだねえ。
というわけで、5月以降はヒトが変わったように、ハノンとツェルニーを熱心に練習するようになった。まあ、タカタカ系は好きだし。
「ぱらんぱらんの指」はとても新鮮で、これをもっとぱらりこできるようにしたら、あんな曲もこんな曲ももしかしたら弾けるかもと、これまで湧いて来なかった夢がつい膨らむのう。