身体も心も診てくれるお医者さん

私の本性は引きこもりです。ヒトと関わることがメンドウくさい。外に出ることがメンドウくさい。着替えるのも顔を洗うのもメンドウくさい。どうかすると食べるのもメンドウで一日一食しか食べないときもあります。

でも、なにかでいよいよ困ったらしかたなく外に出ます。今日はしぶしぶ病院へ行きました。左ひざの痛みが取れないので整形外科で診てもらうことにしたのです。

4年ほど前からちょくちょく左ひざが痛くなりました。はじめのうちは長い間歩いたあとに痛くなり、その後安静にしていると治りました。けれどもたびたび痛くなるので、2年前に整形外科に行ったところ、そのときは「大丈夫ですよ。とくに問題ありません」とのこと。

そのころにしっかり運動して筋力を付けていたらよかったかもしれません。でも、ちょうど両親の介護があったり、その疲れで引きこもりがちになったりでほとんど外に出なくなってしまいました。こりゃいかんなあと思って、電動アシスト自転車でボチボチ運動をはじめたのが去年の秋です。ところがちょっと遠出をしたらかなりズキズキ痛くなり、それからあとは軽い痛みがずーっと残ってしまいました。

さて、前から行きつけの病院での診察ですが、整形外科でははじめての先生でした。ネットで見たらこの先生はひざ関節がご専門らしい。2年前の先生とはちがって、この先生は診療ベッドの上に私を仰向けに寝かせて、ひざをいろいろな方向に念入りに動かします。けっこうな時間を取って診てくれましたが、まあこんな風に丹念に診察してもらえると患者は安心しますよね。

そのあとX線撮影。いろいろな姿勢で5枚も撮りました。2年前はこんなに撮らなかったなあ。でも、なんか多いほうがうれしかったりして。

ふたたび診察ですが、先生は開口一番、
「いまのところ、軟骨もちゃんとありますから大丈夫ですよ。ほら、2年前と比べてもここのスキマの幅はあまり変わらないでしょう?」
ふむふむ、ええと、軟骨は透明?
先生は、私のリアクションがいまひとつと見たらしく、ヒョイとひざ関節の模型を取り出して、
「これがひざの前ね。ココのやわらかいところが軟骨で、これはレントゲンには映らないんですよ。で、これがなくなるとホネとホネのスキマが狭くなるんです。でも、春子さんはホラ、まだ大丈夫ですよ」
そっか~、よかった! 安心しました。

先生「これからは、痛くない範囲でしっかり運動してください。有酸素運動がいいですね。だんだん筋肉が付いてホネを支えられるようになると、痛みはなくなります。ハイ、この体操も毎日してください」
そうおっしゃって体操療法のパンフレットを渡してくれました。

「クスリはどうしますか? ガマンできないほど痛いわけじゃないでしょ?」と先生。さすがによくわかりますね。そうなんです、むちゃくちゃ痛いわけではなくて、ふだんは違和感が強い程度の痛みなんです。

私はあまりクスリを飲むのが好きではないし、先生の口ぶりも「どっちでもいいですよ」という感じでしたので、クスリはやめておくことにしました。

引きこもりの私ですが、じつはハイキングは好きなんです。三十代のころはよく山をウロついていました。ヒトがいない自然のなかはくつろげるのです。けれども、ひざが痛くなってしまってもうハイキングに行けないのかなあとすごく残念でした。

それで恐る恐る先生に尋ねてみました。
「あのう、だんだん良くなってハイキングとか行けるでしょうか?」
先生は、私の目をじっと見てこう言われました。
「ひざの手術をして、スポーツを続けるひともおられますよ」

これには感動しましたね!
だってね、ふつう日常生活に差し支えがなければそれでいいじゃないですか。だからお医者さんに趣味のことまで「大丈夫ですか?」って尋ねること自体、すごく訊きにくかったんです。

でも、この先生は私の気もちを瞬時にわかってくれたんですよね。ああ、このおばちゃん、ハイキング好きなんだなあって。それができなくなるんじゃないかって心配なんだなあって。だからあんな風におっしゃってくれたんですね。

スゴい励ましかたもあったもんだと私は心底感心しました。いい先生に出会えてほんとうによかったです。と同時に、こういうスゴいひとに接すると、やっぱりだれかとどこかでつながっているのは大事だなあと思いました。

何もかもメンドウくさいで済ましていては、自分を粗末にすることになりそうです。先生の思いやりをすなおに受け取って、これからは少しずつウォーキングでもしてみようと考えています。