父の献体後火葬 その7

さて、タクシーが来たので乗り込む。Sさんが骨壺を運んでくれたが「重いですねえ」というコトバが思わず出た。涼しいタクシーの中からSさんの姿を見送る。きっともう二度と会うことはないけれど、解剖から野辺送りまでずっと父に寄り添ってくれたひとだ。ありがとう。さようなら。

斎場をあとにしたのは昼12時すぎ。帰りの飛行機は夜8時55分発なので時間はあり余ってる。しかし、さすがに精神的に疲れ切っているし、骨壺は重いし、観光は苦手だしということで、どこにも行く気がしない。

とにかく電車を乗り継いで、いちばんメインの駅に戻った。ここの駅は巨大すぎていつも何が何だかよくわからない。田舎っぺの私がこんなところにいていいのだろうか?とソワソワ落ち着かない。まずはお昼ごはんにしようと、駅に隣接したデパートに入り、そのなかにあるカフェでランチを取った。

上の階にあるカフェだったので、窓際からは駅前の道路や大都市の街並みがよく見渡せる。おかわり自由のパンを食い散らかしながら、ぼーっと景色を眺めていた。父ちゃんは高いところが好きだったから、こんなカフェは喜ぶよなあ。ああ、父ちゃんをもっと連れて行ってあげたらよかったな。

と、父の骨壺に目をやると、元気いっぱい黄色のスヌーピーエコバッグに包まれて、これはもう全然骨壺に見えない。しかし、せっかくの袋なんだが、これはかなり手に食い込んで痛いんだよね。カフェで3時間ほど長々くつろいだあと、デパート内で適当に買い物をする。

タオルハンカチ2枚を買って、レジで「すみません、大きな紙袋をもらえますか?」と頼んだところ、店員さんは非常に察しのいいひとで、最大の紙袋を二重にして、スヌーピーエコバッグをすっぽり入れてくれた。さらに、紙袋の柄の部分にはプラスチックの持ち手をはめて、そのうえ薄いクッションビニールを巻き付けて持ちやすくしてくれた。

この店員さん、たぶんコレが骨壺だとわかっていたんだろうな。わかった上で、目立たなく持ちやすくしてあげようと思ってくれたんだ。おかげで、父ちゃんはなおいっそう骨壺に見えなくなって、まるでデパートで買った地球儀かなにかみたいになってしまった。これなら機内持ち込みもバッチリOKだろう。

持ちやすくはなったけれども、当たり前だが重さは変わらない。あとで空港で量ったら6キロもあった。6キロの荷物というのは、10歩ごとに手を持ち替えないと持てない重さだとよ~くわかった。重すぎる父ちゃんのせいで動く気がどんどんなくなり、結局空港行きバスの出発時刻までデパートでぼんやりしていた。

空港行きバスはネットで時刻指定便を予約していたけれど、もう1便早いバスでも乗車させてくれた。空港には午後7時に到着。することがないので晩ごはんを食べたがまだまだ時間がある。まあ、ぼーっとしているのは好きなので時間つぶしは苦にならないが、あれまあ、飛行機の出発が遅れるらしい。

「使用機到着遅れ」ということで、20:55発→21:10発になった。飛行機は遅れることが多いし、早めに空港に行かないといけないし、それで飛行機が嫌いというひともいるらしいが、私はけっこう飛行機が好きだ。なにが好きかというと、離陸のときのアノ加速感が大好きなのだ。

というわけで、ちょっと遅れた飛行機に乗り込み、手荷物検査でまったくスルーだった父ちゃんの骨壺も上部棚に載せて、ぐい~んと心地よい加速に身を任せて、ああ、夜間飛行ってはじめてなんだよなあと感動した。

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