私は「聞く耳」をまったく持っていなかった

肝心の合宿心理学セミナーについてだが、かなりヘヴィーな合宿で心身ともにヘトヘトだった。
参加者は合計12名。4名ごとにグループになり、グループ単位でワークや話し合いをおこなう。
今回のセミナーは「ライフワーク」がテーマで、そもそもライフワークの実現には3~5年はかかるので、今後数年間にわたってこの同じグループで活動するらしい。

私と同じグループのひとは20~30代の女性3名だった。
日中前半のグループワークではまずまず穏当な雰囲気だった。よくある心理学セミナーのグループワークだ。

ところが、後半のワークで「今までの人生で自分が抱えた問題のうち、印象的な出来事を5つあげる」というのがあった。
これは事前課題でもあったので、私はいちおう5つピックアップしておいたが、どれも恐ろしくエゲツなくて自分で書いていても相当げんなりしていた。

だってさあ、こんなに変人の私が半世紀以上も生きてきたわけだから、そりゃもうとんでもない問題がてんこ盛り。
ここらへんの事情は私の妹がいちばんよく知っているけど、まあ、さすがの私も一生だれにも話すつもりがなかった。

しかし、だ。「それでは、その出来事をグループでシェアしてください」なーんてカウンセラー先生がのたまう。
はは、コレぜんぶ、いまココで言うのかよっ?!

まあでも、そういうめぐり合わせなんだなあと思って、私はシレシレと5つの大罪?を告白した。具体的にはヒトを裏切ったりあざむいたりした内容ばかりだ。
ええと、直後みなさんドン引きで、居心地の悪い沈黙がつづいた。
それでも、しばらくしてからみんなはぽつりぽつりと「その問題から浮かぶそのひとの才能」を話してくれた。

そういうみんなの気もちはありがたいけど、う~ん、やっぱり話さないほうがよかったかなあと少し後悔する私。
もともと露悪気味なところもあるので、ヤケクソすれすれのきわどい心理状態だった。

ぐっちゃんぐっちゃんになりながらも初日のセミナーはいったん終了。そのあとお店へ移動して夕食。
そして午後9時にはホテルへ移って、地獄のグループワークがはじまった。

課題は「みんなで話し合いながら、自分のライフワークを見つけ、さらにそれを『ライフワーク・ストーリー』としてまとめる」。
ひとりずつ自分のことを話して、それに対してほかのメンバーが質問や助言をし、そのひとがライフワークを見つけられるように助ける。

こういうのはやっぱり時間がかかるね。ひとり2時間以上は話し合っていたかな。私は最後になって、そのときはもう夜中の3時10分だった。

みんな疲れ果てていたし、私もしんどくて正直どうでもよくなっていた。
そして、そもそも私は、自分のライフワークは「山」とほぼ決まっていたので、みんなのように迷いもなかった。

それでいちおう「私はもうライフワークは見つかっていて、それは山に登ったり山を見ることで、でも煎じ詰めると『ひなたぼっこ』になるかもしれません」と話した。

さて、ほかのメンバー3人はパートナー問題をかかえていた。これから離婚を考えているひと、いま付き合っているひとと結婚するかどうか悩んでいるひと、過去に離婚してこれからパートナーをどうするか考えているひとだった。

なので、私はとても困惑していた。これまで延々とパートナーがどーしたこーした、ダンナがあーだったこーだったと聞かされつづけてきたけど、どれも私には無縁に思えた。
そして同時に、私自身がこの場でどんな話し合いを期待していたか?ということにも気づかされた。

私が勝手に思い描いていたのは、「私の『山』」に相当するような、とても熱い想いで焦がれて「なにか」をめざしているひとの話を聴くことだった。
それなのに、このメンバーのひとたちはそういうものではなくて、だれと付き合うとどんな人生になるか?ということに関心があったのだ。

いやべつに、それぞれ夢がちがっていて当然だからかまわないけれど、どうも私ひとりが大きくちがっていて少なからず失望していた。
このひとたちに私のライフワークを話しても、たぶん共感してもらえないだろうな。

いま思い返すと、この時点で私がまず「メンバー3人を信頼していなかった」ので、結局さんざんな話し合いに終わってしまった。
そう、私が引き起こしている現象だとわかっているが、「どうせわかってもらえないだろうな」と思っているので、やっぱりわかってもらえなかったように感じた。

ただ、3人のひとたちは「春子さんはもっとひとと関わったほうがいい」とアドバイスしてくれた。
うん、そうだとしても、私のいまの実感では「ヒト付き合い」をライフワークにからめるつもりがほとんどないんだよね。パートナーも考えたことがない。

私は積極的にヒトと付き合いたいと思っていなかったので、ただ聞いているだけにとどめ、3時50分にはワークを終了して各自の部屋にもどった。

翌日のセミナーでは、おのおのの「ライフワーク・ストーリー」を全員のまえで発表した。
私はあらかじめ書いてあったストーリーを少し手直ししただけだった。のんびり山を見たりぶらぶらすることをライフワークにしたいと発表して、みんなの拍手をもらった。

しかし自分の席にもどったとき、メンバーのひとりが私に向かって、「昨日わたしたちがあれだけ言ったのはなんだったんだろうね」と言った。
一瞬私はなんのことかわからなかった。

あとでよくよく考えると、おそらく「もっとヒト付き合いをしたほうがいい」というアドバイスを取り入れたストーリーに、どうしてしなかったの?と、そのひとは言いたかったようだ。
もちろん彼女は私を非難するつもりではなくて、ただすなおに自分ががっかりした気もちを話してくれただけだ。

それでハタと気がついたが、私はまったくもってぜんぜん「聞く耳」を持っていないなあと自分でおどろいてしまった。
ホント、みんなの意見を丸っきり聞くつもりがなかった。
私は、ヒトよりも圧倒的に山が好きだったので、あの場で3人にヒト付き合いをすすめられても、微塵も受け入れる気がなかった。

で、いまは、そういうことじゃあかんなあと思っている。
みんななにかしら「春子さんはひとと関わったほうがプラスになる」と感じていたわけだから、それに対してもっと向き合えばよかったと反省している。

やっぱり15年間もひきこもりをしていたので、だれかの意見に耳をかたむけるということがぜんぜんできなくなっているようだ。
いや、ひきこもりのせいだけではなく、もとから私は聞く耳を持っていなかったんだろう。
そのことがわかっただけでも、このセミナーに参加してよかったとつくづく思う。

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