やみくもな迷走の末、なぜかコールセンターに採用される

朝、目が覚めるやいなや、そうだ、清掃の仕事はどうだろう?と思い立つ。
清掃は年配のひとをけっこう見かける。そういえば、ハロワのシニアコーナーでも清掃をすすめられたことがあった。

で、顔も洗わずにパソコンを激しくぶったたいて検索したら、おお、あるじゃん! 「60才以上歓迎」とかうれしい文字がおどっているよ。
そこで、クルマでハロワへ行って、もう一度求人検索をして、ウチからいちばん近いスーパーの清掃に応募した。ハロワのスタッフさんが清掃会社に電話してくれたが、あいにく担当者は不在で、あとで私に直接電話をしてくれるそうだ。

いったんウチに帰って、ハロワ以外の求人サイトでも清掃の仕事を探したり、仕事内容を検索したり、あげくには便所掃除に特化したサイトを発見して、全ページくまなく読んで勉強していた。

すると、とつぜんスマホが鳴ったので、ほう、清掃会社がもうかけてくれたかとイソイソ出てみたら、それは昨日面接を受けたコンビニからだった。
あのかわいい店長さんが「たいへん申し訳ありませんが、……ウンヌンカンヌン」と言っているが、私の脳ミソはすでに便器で埋め尽くされていたので、「ああ、ハイハイ、ちっともかまいませんよ」とナマ返事をして早々に電話を切った。

その30分後、またスマホが鳴る。こんどこそ便所掃除じゃ!とよろこびいさんで出ると、「あのう、A会社ですが……」
はあ? A会社?

「コールセンターの応募ですが、採用になりましたので、来週月曜日から来られますか?」

はあああああ? ………………そうだった。そういえば、去年A会社のコールに応募してたんだなあ。そんなむかしのハナシ、もう忘れてたわ。
てか、そうだ、思い出した! だってさ、面接のヒトがふたりして「この仕事はむずかしい、むずかしい」って連呼してたから、もうやる気ないんだけど。

いま私のアタマには便器しか存在しない。
そこで私は「すみません、そのお仕事は私にはとてもできそうにありませんから、せっかくですが辞退させていただきます」とあっさり言った。

こんどはA会社のヒトが仰天したらしく、「ええっ?! でも……応募……されたんですよね?」
私「はい、なにも知らなかったので面接にも行きましたけど、私にはむずかしすぎます。トシがトシなので記憶力の低下もヒドいし、そちらにご迷惑をおかけすることになります。いまは便…、じゃなくて、べつの仕事を探していますので」

すると、先方さんは「ちょっとお待ちください」と言って、電話を保留にした。
保留メロディーは、ビバルディの「春」だ。ド、ミミミーレドソー、ソファミミミーレドソー、ソファミーファソファミレシソ♪ うん、この曲大好き♪

しばし「春」を聞くこと7回、そろそろ「夏」を聞きたいなあと思いはじめたころ、
「あのー、先日面接をしたN本ですが」とべつのヒトが出てきて、「いや、大丈夫ですよ、ちゃんとご指導いたしますし、さいしょはかんたんな内容からはじめますから」

と、N本さんはどういうわけか、こんなおばはんに対して熱く説得をはじめたのだった。
そういえば、ハロワで聞いたけどほとんど応募者がいなかったし、お困りでいらっしゃるようで。んでも、私は便器をみがきたい。

とはいえ、とても懸命に話してくれるので、いったん私は「それでは、少し考えさせてもらえませんか?」としょうことなしに切り出した。
N本さん「はい、かまいませんよ。できましたら早めにお電話をください。いいお返事をお待ちしています」

ふう。電話を切ったあとも放心状態だった。
ええと、どうしたらええんやろ? パニック。

清掃、やりたかったんだけどね。スーパーの開店まえにやる清掃で、だいたい清掃ってひとりで黙々とできるし、私は「汚いモノ→キレいになる」という変化がかなり好きだ。
コンビニの仕事のなかでも、とくに清掃は好きだった。よごれた便器をピカピカにするのも気に入っていた。

う~ん、便器と電話とどっちがワクワクするだろう?
ただ、A会社のほうはコールだけではなく、事務も少しやらせてくれるらしい。う~ん、事務はまあまあ好きだな。それに、大きめのA会社なのでいろいろ勉強になるっちゃなるんだけどね。

さんざん悩んだあげく、思い切ってA会社にすることにした。
なぜなら、清掃の仕事は60才をすぎても求人があるかもしれないが、A会社はいましかできないからだ。

そこで、できるかぎり脳ミソから便器のイメージをとっぱらい、あらためてA会社に電話をして「さきほどは失礼いたしました。そちらでお仕事させていただきます」と伝えた。
さいしょに電話をかけてきてくれた男性は、明るい声で今後の予定を説明したのち、「それでは、来週月曜日にお待ちしています」と言ってくれた。

というわけで、ぜんぜん考えてもいなかった方向に流されて、A会社のコールセンターで働くことになった。
ええと、やるからには「継続」ね。便器は忘れて、とにかく「継続」!

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