コールセンター、坊主めくり

さて、2回目の出勤だ。私はできるだけ働きたくない。なので、こんどの会社ではあんまり早く出社しないことにした。
これまで勤めてきた会社では、いつも始業の30分まえから仕事をはじめてサービスしてたけど、もうやらへんねん。

こういうのははじめが肝心だから、今日は始業15分まえに会社に到着して、のんびりトイレのあと、もさ~っと仕事場に顔を出して、始業8分まえにタイムカードを記録した。
ここの会社は私服のままでいいし、「作業しやすい服装で」と言われているので、山服がちょうどいい。便利だなあ。

さっそくに受電の仕事に取りかかったけど、あれえ? 今日はけっこう忙しいぞ。
よく考えたら、1日目はコール担当者が私を入れて3人だった。今日は2人だけ。どうやらこれがふつうの体制らしい。するとそこそこ電話がかかってきてちょっとせわしい。

といっても、電話っちゅうのはひとりでひとつしか出られない。しかしコール担当のふたりともが電話に出ていて、べつの電話が鳴ったら、そのときはちゃんと隣の部署のひとたちが取ってくれる。なんだ、べつにだいじょうぶじゃん。

電話をつぎつぎ取っていて思ったけど、コレ、坊主めくりみたいだねえ。
札をウラ返してみて、ふつうのテマヒマをかけて数分ぐらいで終わる電話。これがいちばん多い。

たまに「姫」が出ると、ラッキー! ひと言ふた言返事をするだけで電話はおしまい。

で、「坊主」がやっぱり出るんじゃよ。坊主めくりだからね。
今日はけっこう長いクレーム電話が2件あった。どちらも会社に落ち度はなくて、お客さん側の事情で苦情めいたことを話したかっただけのよう。私はむかし勤めていた会社でよくクレーム処理をしていたのでそんなにイヤではない。

でも、まだ仕事の内容をよくわかっていないので、あまりお客さんに満足してもらえず残念だった。
相づちの打ちかたとかもヘタすぎたのう。ここらへんはカウンセリングの技法を勉強してみなくっちゃ。

私の上司は、40代ぐらいの女性で、明るくテキパキ教えてくれるとてもいいかた。「ごめんね~、2日目からこんなに電話取らせちゃって」と何度もあやまってくれるけど、いやいや、それがお仕事だからぜんぜんかまへんけど。

同僚のパートさんたちも、みなさんていねいになんでも教えてくれる。年配のベテランさんも多いが、べつに恐い感じのひとはいなくてホッとした。
てか、長年勤めているパートさんが多いので、じゃあこの仕事は慣れたら長くできるんだなあと思った。

仕事の内容も、いまのところそんなに難度は高くないように思う。たぶん複雑怪奇なハナシは、めったにないんじゃないかな。専門的な話だったらその部署に回すし。
それに、ホンモノの坊主めくりほど坊主はぎょうさんおらへん。たいしたことない。

とちゅうで、面接をしてくれたひとが部屋に入ってきて、こそっと声をかけてくれた。「だいじょうぶですか?」
「はい、だいじょうぶですよ」と私。そのひとはいろいろ話してくれて、さらに「なにかあったらいつでも相談してください」とのこと。
わあ、たかがパートのおばはんにちゃんと気をつかってくれるんだなあとびっくり。

で、1件だけ電話の転送ミスをした。厳密には私のミスではないけど、まあ新人のミスにしといたほうが丸くおさまりそうなので、帰り際にその部署にあやまりに行くことにした。

そこのフロアに行って私が「すみませんでした」とあやまると、担当のひとはニコニコして「わざわざ来てくれたの? べつにいいのに」と言ってくれる。
そうしているうちに、その場所へ私の上司のひとがやってきて、「春子さん、帰りにココに寄るって行ってたし」と言って、いっしょに「すみません」とあやまってくれた。

なんか、みなさん細かく気をつかってくれてうれしいなあ。思っていたよりもはるかに居心地のいい会社だ。
う~ん、こんなによさそうな職場だし、これからはもちっとがんばってみようかな?
ウチに帰ってまで勉強する気はないけど、仕事場でちょこちょこ備忘録はつくっている。いちどやったことは次から自分ひとりで対応できるようにしておこう。

働く気がぜんぜんなかったというのに、みんなの好意にほだされて、思わずやる気が出てしまった。ちょっと悔しいぜ。

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