ごとごとごとごと、心臓が不穏なのはなぜでしょう?
それは、数日前に飲みほした「カウンセリング」という名の劇薬のせいです。
カウンセラーO先生は、まあ言ってみれば「現代のシャーマン」だよねえ。
前々からすごいかただと思っていて、だからどうしても会いたくて、2年前は東京のセミナーに3回出席した。
でも、個人カウンセリングはなかなか踏み切れなかった。それに、もともと私は地元近くのN先生に4年以上お世話になっている。ほかの先生にかかるのはちょっと後ろめたい。
しかし、私のココロの奥底でマグマのようにたぎっているナニモノかが「音楽」に関係するとわかり、そうであれば、もうO先生に会わねばならなかった。
なぜなら、O先生は音楽家であり、かつ心理カウンセラーだからだ。
密室で対峙したO先生は、空恐ろしいほどすごいかただった。そのエネルギーに感電しそうだった。
セラピーは、まるで即興演奏のように紡がれる。ときおり響く音叉の音色、そして私の指に当てられる音叉の振動に呆然となる。
目を閉じて、先生の誘導にしたがっていると、まぶたの裏にありありと光景が浮かんでくる。
そうしてあぶり出される「本来の私の姿」にまたも茫然とする。
いやしかし、その「本来の自分」は、N先生のワークショップで現れたときの姿と同じだった。
私はやっぱり「音楽」に関わりたいらしい。私の深い部分は「音楽」を欲している。
なぜ?
O先生が、私に言ってくれたことばを思い出した。
「いいお父さまだったんですね」
そうだね、私はやっぱり父のあとを追いたいんだ。
父のように「音楽」を愛したいんだ。
父のように、作曲家に畏敬の念をいだき、作品を愛で、演奏家に敬意を払いたいんだ。
そして、もうひとり「ピアニストB氏」の存在も、私を突き動かす。
私なんかがおこがましいのも承知だけれど、もうね、すべてをかなぐり捨てると、やっぱりピアノを弾いてみたいんだ。
それはもうどうしようもなく、とうてい制止できないほどの衝動なんだよ。
で、どうする?
先生は言った。「いいんじゃない、やったら? 春子さん、向いてるわよ」
はは、そうなんですか? え? 先生、ホント?
ふはは、いやそういうことは、自分で決めるもんですよね? それでも先生、そんなこと言っちゃっていいの?
いやいや、専門家である先生のことばには非常に重みがある。
この上なくありがたい。
だから私はあらためて決心した。
私は、音楽を学ぶために大学をめざすことにした。