昭和56年3月11日から抱えている大問題|コレっていったいいつになったら解決するん?

大むかしから納得できないのだが、なぜこんなに長い時間働かないと生きていけないのだろう?

まあ、いまのワシはたかがパートだから一日せいぜい8~9時間の拘束ですんでいるけど、それでもさ、プライベートに使える時間はものすごく少なく感じるねん。

ワシ料理せんからオカズはぜんぶスーパーの総菜や。フロ嫌いで週に2回しか入らん。洗濯も10日に一度、そうじにいたっては夏に引っ越してから一回もしとらん。ここまで家事やっとらんのに、それでも時間がぜんぜんない。

人生のあらかたを仕事に取り上げられてるような気がしてならへん。

ええと、ワシが働きはじめたのはいつのときやろ?
高校3年のとき、郵便局で年賀状仕分けるバイト行ったんがさいしょやね。でも、バイト代はぜんぶ母ちゃんに渡さんといかんかった。バイトぜんぜんおもろないしゼニも手に入らん。

郵便局におったヒトに「あんた、なんでそんな牛みたいなガラのセーター着てるん?」って言われたのもイヤだった。そのセーター、母ちゃんが買うてくれたんやけど、うん、そう、ピンクの地に黒のデカい模様が入ってて、ホルスタインみたいでイヤやと思ってたとこ、図星さされて難儀したわ。



さっき卒業証書のPDFファイルを確認したら、高校の卒業式が昭和56年3月1日やった。
つぎ、年金手帳を確認する。「初めて被保険者となった日」→昭和56年3月11日!

くそったれ、卒業してから10日後にはもう働いとるやんけ!

はじめて出勤、てか研修行った日、それが昭和56年3月11日なんだけどめちゃくそイヤやった。研修のヒトたちはとてもきちんとていねいに教えてくれるんだけど、なにひとつ興味わかへん。それでも研修は3月いっぱい延々つづいた。いま思えばなんとも妙ちきりんな内容もあって、毎日「字の練習」もした。「あいうえお」からはじまって「ん」まで毎日書く。カタカナも練習する。数字も漢字も練習。

もちろん仕事についても習うけど、商業高校出のエリートたちが簿記だのそろばんだのバリバリできるから、普通高校出身のコらは小そうなっとった。

イヤでたまらん研修が3月末にやっと終わった。最後はみんなで手をつないで歌を歌った。今日でお別れということもあってちょっと涙ぐんでるコもおった。ワシはといえば、これから先こんなにクソおもしろくない仕事を定年までやらんといかんのか?と思って、ココロの底から絶望して、そうや、ついでに泣いたろって思うて大声で泣いてみた。

ホンマにワンワン泣いてたら、みんなが「春子ちゃん、そんなに泣かんとって」言うてよってたかってなぐさめてくれた。

いや、ちゃうねん。働くのがイヤで泣いとるねん。でも、みんなは「春子は研修仲間と別れるのがツラくて泣いてるええコや」とうれしい誤解をしてくれてる。ああ、ウマいこといったなって思うて、ハラんなかでは魔法使いのバアサンみたいにイッヒッヒとほくそえんでいた。



大泣きするほどイヤな仕事が、翌日4月1日からはじまった。その会社では入社してから1年間は、高校の制服を着て出勤する決まりになってた。おなごはセーラー服、おとこは詰襟や。さらに、出勤とちゅうにある大きめの駅で、みんなで待ち合わせしてから出勤する。集団出勤や。会社の帰りも集団で帰る。寄り道禁止。

エラい窮屈やった。それでも自宅からの通勤はまだラクなほうで、地方から出てきたコらは会社の寮に入らんといかん。そこではひと部屋ふたりで、先輩といっしょに生活する。めちゃくそタイヘン。親元離れるとき、船乗って、港でテープ張って、だんだん親の姿が遠くなって……っちゅーコもおった。めっちゃ昭和チック。

さて、仕事はおもくそつまらんかった。宛名書きとかゴム印押しとか伝票書きとか、まあコンピューターがないからそげな仕事はなんぼでもあるんやけど、やってもやってもおもろない。とちゅうから、シュレッダーかけがメインの仕事になった。会社中から200個ぐらいゴミ箱集めて、そのゴミをふつうのゴミかシュレッダーかけるか、それを分けるのがワシの仕事やった。

やっぱりおもろないねん。コレを定年までやるのはつまらんのうとため息ついてた。

しかし、だ。いまになってよくよく考えると、そんな仕事でゼニもらえるんやから、いま思うと悪ないやん? ただ、ソコの会社は残業代がつかなかった。「残業代は給料に含まれてます」って言われてみんなうなづいとった。コレも時代やねえ。だいたい月150~200時間はサービス労働してた。みんなそう。

けど、あるときワシはあまりにもアホらしくなって、突然会社に行かなくなった。うん、行きたくないってホンマに思って、じゃ行かんとこって決めて行かないことにした。で、クビになった。



そのあとはパートを転々としてきたけど、ああ、ドコもつまらんねえ。
働いている最中は、なんとか工夫して「楽しいこともある」ってムリヤリ自分をゴマかそうとしていたけど、はあ、ホンネに忠実になったらやっぱりおもしろい仕事ってないねん。

う~ん、そもそも仕事におもしろさなんて求めたらあかんのやろか?
それとも、自分に向いてる仕事やったらおもろいんやろか?

あ、また無限ループにハマッてもうたけど、ワシはどないしたらええねん?

で、ふと思い出した。こないだ「もの忘れ外来」行ったとき、ソコの精神科のお医者さんが「なにか専門職についてください。研究とかしてください」って言うとったわな。ワシ、このトシでいったいぜんたいなんの研究すんねん?ってガックリきたわな。

そりゃま、「ピアノの研究」することにしたけど、当面ゼニいるやん? 生活費いるっしょ? そこらへんどうしたらええのかはお医者さんも言うてくれへんしねえ。
なので、今日もイヤイヤパートに行く。明日も行く。ずっと行く。なんかヘンやなあと思いつつ、とにかく働く。

なんで、世の中こんなシステムになっとるん?

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