ピアノの先生に「もっと太ったほうがいい」と言われてけっこうショックだった。
「弾きかた」そのものは、去年4月からホントに基礎の基礎からハノンやツェルニーでがんばってきたつもりなんだけど、ああそうか、やっぱり「音が出てない」んだなあとがっかりした。
しかも、そう言われるのは2回目だしね。1回目は小学5年か6年のとき、当時習っていたピアノの先生から「もうちょっと太らないとねえ」と言われてびっくりした。
いや、小学生のときはともかく、いま胴体は非常に太い。もっとも太い部分は91cmもある。これからできるだけぎょーさん食って太るつもりだけど、腕や指が太くなるまえに、まず胴回りが1メートルを超えるだろう。見た目なんかどうでもいいと思っていたが、あらためて「太ってください」と言われると、えっ?これ以上ブタになるのかあとゲンナリもする。
ただし、ネットを見ていると「生徒たちに太ることを推奨している」と書いているピアノの先生がやっぱりいた。痩せていると「音まで痩せる」そうだ。音色のためには太ったほうがいいらしい。
そういえば、むかしウチの親がオペラ歌手のデブり具合でさんざん文句を言っていた。父ちゃんがいっちゃん好きだったのはオペラだ。だからよく「歌手、自分のカラダが楽器やから太ってなあかん」と言うとった。
でも、「椿姫」とかで巨体の歌手が瀕死を演じて歌うのがヘンだと文句を垂れる。「あない肥えとったら死ぬわけあらへん」ってよく言ってた。と言いつつも、そのハシから「まあ、カラダが楽器やからな」とひるがえす。父ちゃん母ちゃんふたりして、オペラ歌手はどのぐらいまで肥えとったらええのかよく話してた。
親は歌手のデブ加減のハナシしかしてなかったが、ピアノの先生はワシに「太れ」とおっしゃる。しかもふたりも! 音楽やるにはそんなに太い細いが関係あるのかとあきれる。けれども、体格は重要なんだろうね。
小学生のとき、そのピアノの先生の生徒さんで、ものすごく上手なヒトがいた。ワシより2才ほど年上だったが、背が高くてすでにガッチリした体つきをしていた。ええと、まだ中学生のはずだろうにそんなにいい体格だったんだよね。きっと手も大きかったにちがいない。
その生徒さんは、先生にとてもほめられていた。対して、ワシはずっと怒られてばっかりだった。まあ、練習せえへんからうまくならないんだけど、そうか、太い細いのちがいもあるのか。だから、あの先生は「太らないとねえ」とアドバイスしてくれたのかもしれない。
あれから46年後のいま、またしても「太ってください」と言われている。
ああふしぎ! 言われることはいつもおなじ。
けれども、どの先生が見ても「コイツはまず太ったほうがよい」と判断されるんだねえ。
じゃあ、とりあえず太ってみよう。胴回りが1メートル超えて、身動きが難儀になってきたら痩せたらいい。
まずはすなおに太ってみる。食べることに関心を持ってみる。プロテインを摂るのもいいらしい。ちゃんと太るために努力してみよう。