母ちゃん、服が好きでな、たぶん500着ぐらいは持ってた。6年前実家を整理しに行ったとき、一点一点確認した。
そのときはだな、両親は賃貸マンションにずーっと住んでいて、だが父ちゃんが急に脳梗塞で倒れて寝たきりになり、父ちゃんが入院中に母ちゃんが「引っ越すっ!」と言い出したのだ。
あの賃貸は60㎡ぐらいだったかな。そこにおもくそぎょーさんモノが詰まっていた。引っ越し荷物に換算すると、段ボール100箱ぐらいらしい。母ちゃん「ジジイのモンはぜんぶ捨ててっ!」って金切り声上げるから、まあ父ちゃんのモンはぱっぱか捨てたが、せいぜい段ボール20箱ぐらいかね。
父ちゃん、小学1年のときから夜間大学5年までぜんぶ成績表を保管していた。あのおっさん、やっぱしそういうのにこだわるんやな。だから、ほら見ろ、私はこないなババアになってから某芸大行く!ってなタワゴト抜かすんじゃわい。
あと、父ちゃんの持ち物は本が多かった。ベートーベンの伝記は何冊かあったが、熱情ソナタの自筆楽譜(ファクシミリ)とかはもうなかった。たぶんずっと以前に処分したんだろう。アレは、私が小学生のときに父が見せてくれて、「このシミはな、馬車に乗っているとき嵐に遭うて、それでできたシミや」って説明してくれたからよく覚えていたのに、残念だった。
さて、残りの荷物80箱分が母ちゃんのモノなのだが、あのヒト、ほんまよう捨てられへんヒトでね。
▼たとえば、帽子。
ね? 18個もあるでしょ? でも、このうち捨てたのは1個だけでさ。帽子、デカい箱に入ってるヤツも多くてすっげえかさばるのに。
え? なんでぜんぶ写真撮ってあるかって?
いやね、整理するのにさ、母ちゃんのところへいちいち実物を運ぶのがタイヘンでさ。母ちゃんが「ぜんぶ写真撮れ」言うたし、私もラクだからそうしたけど、まあ、まず捨てられない。帽子だけでも18個あるヒトだから、服はだいたい500だな。
なので、母ちゃんの持ち物はぜんぶ画像が残っているけど、おおよそ800個ぐらいある。ハンカチとか靴下とかも入れるとね。カバンだけでも50個ぐらいあったかな。
そんなんが6年前の様子で、それから3回引っ越して多少は減らしたものの、まあそんなに少なくなっていない。だから、とうとう最終的に六畳一間のサ高住じゃ、そりゃもう段ボールが床から天井までびっしり積み上げてあって、身動きすらできないだろうよ。
そしたら、今日妹からメールがあった。「おじさん、今日も大奥のところに行ってくれました。書類を段ボール5箱分、中身を点検してから焼却処分してくれたそうです。大変だったでしょう…。処分しないで!とか大奥が言って聞かなかっただろうし…。心から感謝です」
うおっ! ほんとにありがとうごぜえますっ! すみません、不肖のババアふたりが動かない、いや妹はすっごく遠方で仕事もあるから動けない、どっちにしてもいま甲斐甲斐しくお母さまの世話をしてくださるのはおじさまおばさまだけっ!
てか、おじさま何才なん?
父ちゃんが残していた記録を見ると、たぶんおじさんは昭和30年生まれだ。え? 私より7才年上? じゃいま65才?! そんなおトシなのにこんな重労働をさせてしまって申し訳ない。ええと、私の「叔父」なのに7才ちがいなのは、おじさんは母ちゃんの「継母の子ども」、義理の弟だからだ。ややこしいねん、ウチのいえは。
おじさんおばさんに悪いなあと思うものの、私自身は動けない。そもそも忙しすぎてムリやねん。
今日はようやく、バイオリン曲のピアノ伴奏を録音したよ。9月上旬に本番があるヤツなのに、なかなかその伴奏曲の練習ができていない。でも、バイオリンを弾くのはバイオリニストの方だから、なんとかちゃんと仕上げないと。
んで、ともかくいちおう録音した。電子ピアノで録音。だって、グランドピアノまだ調律しとらんしっ! てか、電子ピアノは録音がらくちんっ! もう10テイクぐらいであきらめるっ! 電子ピアノで取ったWAVファイル→MP3ファイルに変換→音デカくするためにノーマライズ、ああそんなの、みんな忘れていて、めんどくさっ!
バイオリニストのYさんに、さっきやっとファイル送ったら、「とてもいい音色ですね」
ちゃいまんねんっ! 電子ピアノはヘタクソが弾いてもキレイになるように設計されとんねんっ! ばよりん弾くヒトは知らんわなっ!