「モーニングページ」は5日目だ。朝起きてトイレ行って、それからA4ノートに書きはじめる。ぼーっとしながらゆっくり書く。30分という時間区切りにしたから、のんびりたゆたうように水性ボールペンで書き留める。わりと読める字を書けるようになってきた。
モーニングページをはじめてから、なぜか夢の一部を覚えている。今朝も起きがけに見ていた夢をそのまま書く。私はなにかのショーに出ていて高い塔に登って降りてくる曲芸をしていた。怖かった。降りてきたらホテルみたいな部屋のなかで、高校生ぐらいの男の子がピアノで即興演奏をしていた。
ひとしきり夢の話を書いたら、いつものようにパートへ行きたくないとグチをこぼす。毎月100万どっかから降ってくるといいなとか、寒いから南の島へ行こう、海辺をウロウロして丘登って温泉、ってコレ毎日書いてるよね。今日はそれプラス「読書」と書いた。ほんま?
私は、最終的によほどかクルマで放浪したいらしい。「放浪願望」ってどのぐらい一般的かな? いやふつう、毎日放浪したくなるひとはそんなにおらんでしょ。もうすでに長期放浪を過去2回やってるのに、まだスキあらば行きたいか。
島は佐渡島しか行ったことない。佐渡島には「金北山(きんぽくさん/標高1,172m)」という日本三百名山があるから行った。たしか金北山→ドンデン山へ縦走した。あ、思い出した。屋久島も行ってたわ。あそこは二泊三日テント泊縦走で「宮之浦岳(みやのうらだけ/標高1,936m)」とかいろいろ踏んづけたあと、屋久杉も見て回った。
すまん。北海道の利尻島、礼文島も行ってた。それぞれ「利尻山(りしりざん/標高1,721m)」「礼文岳(れぶんだけ/標高490m)」を登った。
あたしゃ島なんかほとんど行っていないと思ってたのに、いつの間にか4つも行ってた。てか、どう考えても山に登りすぎである。常軌を逸している。このうえさらに「丘にのぼって」とか「温泉が」などとうわごとを口走る資格はない。
念が残っている山は数百山あるけれど、弾いてみたいピアノ曲ってのが希薄だ。まあ、バッハはぎょーさんおます。まず平均律でしょ? あと、フランス組曲、イギリス組曲、パルティータ、イタリア協奏曲、半音階的なんちゃらとかぜんぶ弾きたい。でもきっと寿命のほうがさきに尽きる。
「弾きたい曲」が湧いてこない原因は身体的制限によるものだ。手が小さいから、もう期待しなくなった。オクターブを横からちょこっと引っかけてしか押さえられず、中身ありのオクターブ和音をまともに弾けない。ハノン音階のカデンツも一部は弾けないよ。
これは山でも似た現象が生じていて、そっちは「高度に弱い」だった。標高2,500mぐらいでもう頭痛がする。高山病になりやすいのだ。槍ヶ岳(標高3,180m)でアタマガンガンだったので、こりゃ国内しかあかんなと思っていた。
おばはんがひとりでテント泊縦走とかしていると、山男たちがよくこう励ましてくれた。「うむ、つぎは海外だね」「国内だけじゃもったいない」「あんた、海外行けるよ」
「いや、私高さに弱いんで」とぜえぜえ息を切らしながら、私は言い訳した。海外の高い山なんて吐き下しながら登るって聞いてたから、こんなに高さに弱い私はマジむりっす。
ということで海外登山はまるっきり考えたことがなかったが、ピアノはどうかねえ?
こっちはなんら命に別状はない。オクターブやオクターブ和音が届かなかったらいっちゃん下を弾かなかったらええだけやん。しかし、そこまでしてむずかしい曲を弾くのもねえ。ガキンチョじゃあるめえし、って妙なミエはっちゃう。
オクターブが単音になると、すごく貧弱になるような気がする。どうもオクターブは、あれこそはバーンと弾けてこそオクターブで、それを「届かへんねん」っちゅーてぽつんと上の音だけ弾くのは曲として成り立たないように感じるのだ。
そもそも「音をはぶく」のはよろしくないのかもしれない。もうずっと前だが、レッスンでシューベルト即興曲を出されたところ、弾けない和音が見つかってその課題は却下された。シューベルトのほかの曲も先生が検討してくださったが、どの曲にも弾けない和音があり、その時点でシューベルトはぜんぶダメになった。
それで、「ソナタアルバム1」になって、いま3曲目をさらっている。ソナタアルバムはいろんな作曲家の曲が収録されているが、ベートーベンはオクターブが多すぎて私には永遠にムリそうである。ギリギリなんとかなるのはハイドンとモーツァルトだけだ。
でも「届きません」って開き直るのもよくないなあ。とくに「届かない→とてもよくないこと」と思ってしまって、いつの間にか「屈託」が生まれて、なんとなく「機嫌がよくない」に発展しがちだと気づいた。
「なんだかかすかに気に食わない曲」って届かない和音どっさりの曲だったりする。いや、ソレとコレは別じゃん。自分が弾けないからってベートーベンぜんぶ気に食わないなんてとこに落ち着くなよっ?! ヒマラヤトレッキングも気に入らねえとか文句言うなよっ?!
そうなのだ。
自分が弾けない登れないからって、その対象が気に食わないなんて「世界」を狭めちゃったら、なにより自分が楽しくないよねえ。