引っ越しの翌日、私は近所のあいさつ回りに出かけた。
新居のあたりは、住宅街からやや離れて、ポツンと孤立した一画。
私のウチの両隣は、廃屋と空き家で、それも気に入ってココに決めた。
しかし、ウチの裏手から「うがいの音」まで聞こえるとは、ウカツだった。
さて、ご近所にはなかなか個性豊かな家もある。
▼ご近所の配置
▼引っ越しあいさつの粗品はこれ。パッケージがかわいい。
まずは「ごく普通の家」を訪れた。
かなり立派な二階建てのおうち。
40代ぐらいのていねいな奥様が出てこられた。
「わざわざありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします」とおっしゃる。
私が「あのう、ピアノを弾くのですが、もしご迷惑でしたら、どうかお知らせください」と恐る恐る言うと、
「ちっともかまいませんよ」とニコニコしてくださった。
ふう、やれやれ。
しかし、この「ごく普通の家」は、ウチからはやや離れているし、そもそも堅牢そうな造りに見えたから、たぶんピアノの音はだいじょうぶかも。
問題は、うがいの聞こえる「ゴミ屋敷」。
あ、テレビもふつうに聞こえる。
じつは、不動産屋さんの話では、
「ココは誰も住んでいません」ということだった。
つまり「隣り合っている3軒が空き家」だからこそ、ピアノを弾けるだろうと思っていた。
でも、住んでるじゃん、ゴミ屋敷にさあ。
話し声も聞こえたから、複数人で住んでるじゃんっ?!
そんな怖ろしげなゴミ屋敷のあいさつなんて、後回し。
次は「謎の家」に行ってみた。
いや、正確には、この時点では「謎」じゃなかったんだけど、あとから「謎」というか「常軌を逸する」というか「阿鼻叫喚」というか、後になってわかったのだ。
で、古めかしい「謎の家」をなにも知らずにピンポンする。
しかし、だれも出てこない。
窓は開いているんだけどね。
2分待ってから、もういちどピンポン。
やはり出てこられない。
しょうがないので、また後日あいさつに行くことにした。
んで、いよいよ「ゴミ屋敷」の番だ。
玄関周りもガラクタがあふれかえっていて、いかにも典型的なゴミ屋敷。
けれども、呼び鈴の位置はかろうじてわかる。
意を決して、そのボタンを押した。
すると……