これまで母は、サ高住に3年間入所していた。
そこでは、イヤなことがてんこ盛りだったという。
とくに辛かったのは「食事のマズさ、粗末さ」。
一日の食費は、1,920円もかかるのに、おっそろしくマズいモンしか出ない。
しかし、入所しているかぎり、出される食事しか食べるモンがない。
母は次第に、食べることそのものが苦痛になってきて、食事のつど、ゆううつで気が滅入ったらしい。
その話は、私も電話で何度も聞いていたので、引っ越し前、サ高住に行ったとき、どんだけヒドいか楽しみに?その食事をのぞいてみた。
食堂で食べるのではなく、部屋まで配膳してくれる部屋食なんだが、いやあ、たしかに貧相だったね。
主菜は、さつまあげみたいな小さい練り物が、ぽつんと一個だけ。
母「コレ、臭くていつも食べられない。ぜんぶ残すの」
私が試しに食べてみたが、ゲッ、イワシかなんかワケのわからん悪臭がキツく、一口食べただけで吐き出したくなる。
たぶん冷凍食品だと思うが、すっげえシロモノだ。
副菜は、クタクタになった色の悪い白菜とかの煮物が少量。これもマズい。
なんとか食べられそうなのは、汁物くらいだが、これもちっせえ玉ねぎが数本浮かんでいるだけ。
まあ、上げ膳据え膳で人件費がかかるから、そのシワ寄せが食材に来ているのかもしれない。
けど、そもそもこんな内容で栄養は足りるんだろうか?
「網走刑務所のほうが、はるかにいいメシだぞ、母ちゃん」
以前、北海道を放浪していたとき、あそこは「監獄食」を体験できる食堂がおましてな。
いま現在の網走刑務所での「監獄食」を食べたらウマすぎて、ほんますぐに刑務所入りたくなった。
それにくらべて、サ高住のメシ、なんやねん?
強制収容所かよっ?!っつーぐらいヒドすぎ。
ま、サ高住メシをつまみ食いしたころには、もう退去するつもりだった。
そして、在宅介護になって1ヵ月ちょっと経過。
母は毎度食事のたびに「おいしい、おいしい、好きなモノばかり食べられてしあわせ」と言っている。
私自身は、とくに食べたいものがないのがデフォルト。
なので、食事のメニューは母が考えて、毎日メモを作ってくれる。
そのメモどおりに、スーパーやコンビニで買い物して帰り、あと、すでに母は入れ歯で大きなモノは噛みづらいので、おかずは小さく切って盛り付ける。
ごはんは、これまで私は玄米だった。
玄米、メンドーだけど長時間浸水してから炊いて、1食70gを食べていた。
母はというと、サ高住ではふつうの白米を1食90gだったらしい。
それで、ふたりで暮らすようになってからは「白米70g」に統一。
4合炊いたら、小分けにして22個もできるので、そいつを冷凍室にブチ込んでおく。
けど、冷凍白米はなかなか減らない。
母ちゃん、ざるそばやそうめんといった麺類が好きだし、お寿司も好き。
なんかそういうメニューが多め。
しかもサ高住ではめったに麺は出なかったので、その反動もあって、麺ラッシュがつづいている。
ああ、このヒト、こういうのが好きだったのねと、あらためてよくわかる。
タンパク質が少ないのがちょっと気になるが、まあ、もうね、好きなモン食べてりゃそれでいいか。
すでに私は、母に運動をすすめることもしなくなった。
食についても、食べたいモノを好きなだけ食べてもらうことにしている。
だって、せっかくシャバに出られたんだからね。