病院の対応に、私は非常にハラを立てていた。
でも、ケンカしちゃったら、相手も硬化するだろうし、まあいちおう怒りは抑えたつもり。
これまで、あちこちのクリニックに行ったが、懇切丁寧なところって、あんまりない。
とくに、90歳ともなれば、母がその場にいなくて、私だけだと、
「おトシがおトシですからねえ」と、必ず言われる。
おおむね、積極的な治療は……どうなんだろうね。
そりゃ、私はシロウトだから、客観的な判断はできない。
けれども、患者本人が「ちゃんと治療してほしい。ちゃんと説明してほしい」ならば、
患者が何歳であっても、そういうふうに対応してもらいたい。
年寄りぜんぶひっくるめて、「どうせ治療しても」「どうせ説明しても」みたいな態度は、いかがなものか?
ただ、べつに怒ったところで、しゃーないなとも思う。
それより、そういう病院でも医者でも、ウマく利用するしかない。
入院した母を、さいしょ診察したきり、あとはぜんぜん来ないヤツでも、いちおう医者なんだから、それなりに使わんとな。
「ナントカとハサミは使いよう」って言うじゃん。
だったら、もし私が、母の主治医に会う機会があったら、口先だけで、
「先生のおかげで、母がこうして安心して入院していられます。
誠にありがとうございます!」って言って、腰を90度に曲げて、1分ぐらい静止しとったらええ。
で、涙ながらに訴えてみる。
「おこがましい申し出で、恐縮のいたりでございますが、母が胃ろうを望んでおります。
シロウトの年寄りが、僭越のきわみと存じますが、なにとぞご寛恕くださり、思料いただきますれば、親子ともども後顧の憂いなく、余生を過ごせることと愚考する次第でございます」
どないしゃべっても、ええねん。
しゃべんのはタダやから。
なんぼでもヨイショして、なんかヤってもらわんとな。
ただねえ。
もしも、ほんまに「なにもしてくれなかった」としたら、それもしゃーないな、と。
あの状態の母を、転院させることはできないわけだし。
師長さんが、私をとくべつに、こっそり母に会わせてくれたのは、もう母が長くないからかもしれない。
母も私も、シロウト判断で、胃ろうを望んでいるが、もはや手術に耐えられないかも。
仮に手術できたとしても、短期で尽きてしまうとわかっていたら、もう手術しないかも。
そういうことも、じゅうぶん考えられるねえ。
なんか、いまは信じられないけれど。