胃ろう造設が無事に終わったので、今日は、A病院を退院 → K総合病院へ再入院。
ウチからA病院までは、クルマで1時間ほど。
車中は、いつもバッハを鳴らしていて、今日の気分はエトヴィン・フィッシャーの平均律。
フィッシャーって1886年生まれなんだね。
だもんで、聞いている平均律もモノラル録音で、古めかしく、でも瑞々しく温かく荘厳で輝かしい演奏。
退院のときは、病院前のロータリーに駐車していいとのこと。
病棟までは、借りた車椅子と荷物カートを、2台いっぺんに運ぼうとしたら、ぜんぜんムリだった。
別々に、交代でちょっとずつ前進させていたら、ひとりの男性が「手伝いますよ」と。
私は、フィッシャーのバッハで、たいそう素直な気もちになっていたので、ありがたく助けていただく。
聞けば、入院中の患者さんだというのに、母の詰所の前まで、車椅子を運んでくれた。
さて、詰所へ行ったら「早すぎます。まだ請求書ができていませんので、しばらくお待ちください」
うん、まあ、9時半退院予定で、9時に着いちゃったから。
20分ほど待っていたら、遠くでガラガラとカートの音が聞こえ、さらに甲高い話し声がちょっと聞こえた。
お、あのトーンは母ちゃんだぜ!
ほほう、おととい手術のあとは、ぐんにゃりしていたのに、もうあんな声出してるとは。
退院手続きのあと、母のそばへ行ったら、張りのある笑顔で迎えてくれた。
よろこんで、なにやかや、おしゃべりが止まらない。
よかったよかった。
心配していた痛みも、鎮痛剤が効いてかなり収まったらしい。
ただ、連続して眠られなくて、1時間ごとに目が覚めてしまったという。
それでも、顔色もよく、表情もあかるく、これならだいじょうぶだなと、シロウト目にもわかる。
クルマへの乗車も、しっかりできていて、う~ん、栄養摂ってリハビリしてたら、手術しても平気なんだとおどろく。
A病院は、大きな病院でもあり、たまたまゆとりのある4人部屋へ入れてもらえたらしい。
母「まるでホテルに泊まってるみたいよ。
それに、ナースコール押したら、看護師さんが、しずしずあらわれて、
『どうなさいましたか?』って、かしこまって聞いてくれるのよ。
もう、K総合病院と大違いよっ!
あそこは、A病院とくらべたら、刑務所だわっ!
看守がしょっちゅう怒鳴るんだもんっ!
ああ、やだっ! いまからまた、刑務所に戻るなんてっ!」
とまあ、ひさしぶりに「母ちゃん節」を聞いたねえ。
いやいや、これだけ怒る元気が出てきて、ほんまよかったねえ。
さて、その「刑務所」に着いてから、またまたイチから入院手続き。
もう、慣れたけど。
お母さまは、3日前とおんなじベッドで、さいしょは「それでいい」と言っていた。
けど、いざそのベッドに寝てみたら、
「ココは窓際で寒いわっ!
A病院は、すごくあったかかったのに。
ほかの場所に替えてちょーだいっ!」
私は、あわてて看護師さんに訊いてみたが、ぜんぶ埋まっているとのこと。
いや、たぶん空いているハズだが、いろいろタイヘンだろうし。
「残念ながら、埋まっているそうです」と女王様にご報告すると、
「寒いわ! カゼ引いちゃうわ! また肺炎よ!」
しょうがないんで、パジャマの上からフリースを着せたら、
「あら、あったかいわあ」とようやく満足。
ついで、テレビの向きも見やすいようにセッティング。
下女が甲斐甲斐しくお世話をしたら、お姫様、ようやくキゲンがよくなった。
ま、胃ろうができたといっても、すぐには栄養を注入できない。
またも、しばらく点滴をしないといけないので、痛くてかわいそうだ。
文句なんていくら言ってもかまわないから、もうちょいシンボウしてくだせえ。