母が入院しているもんで、私は好き勝手に「弾く、聴く、読む」に耽っている。
いっちゃん多いのが「弾く」かなあ。
バッハのフランス組曲第1番の2曲め、クーラントを、1月から片手練習しはじめた。
これ、むずかしいんで、ずーっと片手だけの練習。
片手だけでも、めっちゃ楽しくて、あ、もうずっと片手でおかわりイケると思ってたけど、
さすがに、今日からナメクジぐらいのテンポで両手を合わしたら、
ひゃあ! どエラくきれいで、ときどき鼻血が出そうだ。
よく考えたら、「弾く楽しみ」って、好きなとこだけ、なんぼでも響きを味わっていられるのが大きい、とあらためてわかったぞ。
▼しかし、むずかしい……
四声になるところ、むちゃくそきれいで、重厚で豪華でドラマチックなんだけど、
弾くのは、すんごくむずかしいのよ、いったいどこまで伸ばして、どこで切るのっ?!
みたいなのがおもしろいのも、バッハのお楽しみ。
片手練習を1ヵ月って、はじめてやったけど、よかった。
片手ずつでいちおう暗譜できている。
けど、両手合わしたら、てんでバラバラに崩壊しよるなあ。わっはっは!
なんかぜんぜん弾けないのに、笑いが止まらん!
奇跡みたいにキレイな音の重なり具合が、ほんのちょっとわかるだけでじゅうぶん!
ふう、いろいろおもしろいことがてんこ盛り。
で、1ヵ月ぐらい前は、こういうの、母がいないからズブズブ楽しんでいられるけど、
母ちゃんが退院してきたら、時間なくなって困る……かなあ?と思っていた。
けれども、こんだけバッハが楽しすぎたら、あ、単なる「合計時間」じゃないな、ってわかった。
「好きで楽しいこと」って、時間じゃない。
きっと「エネルギー」みたいなモンだろうなって。
それ、私はバッハや吉村昭からもらっているけど、
母は母で、自己調達しているだろうし、
おたがいにその「エネルギー」を循環させて、いっしょに楽しく過ごせそうだなあ。
これまでずっと、私と母は、趣味嗜好がぜんぜんちがうので、どうも噛み合わない、
なんて思い込んでいたけど、それ、ちっとも心配いらないな。
エネルギーの調達先が、めいめいちがっているだけ。
でも、「情熱の根っこ」はおんなじ。
そして私は、母といっしょに暮らしているほうが、ウマくエネルギーを調達できるのだ。
だから、早く帰って来い来い、母ちゃん。