「子どもの世界観」って、親が作っているよなあ。
まあ、私の子ども時代を振り返るとそうだった。
ウチの親は、ふたりともクラシック音楽が好きで、とくに父ちゃんがレコードかけまくりのおっさんだったから、「それが当たり前」になっちまった私。
父ちゃんの好きな作曲家って、いろいろ移り変わりがあったものの、私が小学3、4年生のころは、やたらベートーベンにかたよっていた。
まあ、年がら年中聞かされていたし、あと、父ちゃんは、作曲家や演奏家をすごく尊敬していたから、やっぱりそういう価値観も植え付けられてしもうた。
だから、子どものころ、私は「古今東西、いっちゃんエラいひとは、ベートーベン」だと堅く信じていた。
いや、いまも、その「ベートーベンはとくべつ」って感じ、抜けてないかも。
ただでも、ウチのなかで「レコードが鳴っているとき」って、そういえば、親はふたりとも「怒ってはいなかった」ねえ。
う~ん、「厳粛な雰囲気」ですな。
父ちゃんが、ていねいにレコードをジャケットから取り出して、ターンテーブルに乗せる。テーブルが回りだすと、父ちゃんは、青色のふかふかしたブラシ?で、丹念にレコードのホコリを取る。
それから、慎重にレコードの針を持ち上げて、レコードの縁ギリギリにそうっと針を乗せる。
「プツッ」と音がして、しばらくすると、曲がはじまって、ああそうか、今日はピアノ協奏曲の3番なんだなとかがわかる。
そういう「儀式」が、毎晩行われたわけだ。
あ、私の父ちゃんって、べつに「高尚なひと」でもなんでもないよ。
育ちが悪くて万引き癖のある、どうしようもないおっさんっす。おまわりさん、どうもすいませんでした。
子どもにも無関心だったから、修学旅行の費用も出してくれなかったよ。
まあでも、いまにして思えば、小さいころからいい音楽を聞かせてくれて、それはよかったなあって思う。
さらに、「音楽は崇高なもので、それにたずさわるひとは、とくべつなひと」という価値観も、いまの私にとって、ああ、べつにそれでいいじゃんって思えるし。
なので、修学旅行よりベートーベンで、まあOKだったよね。
ハノン
ハノン20番 → 合格
めずらしく、1回弾いただけで合格だった。
変ホ長調スケールとアルペジオ → またまた不合格
スケールは「さっきの20番もそうでしたが、今日は音がよく鳴っています」と言っていただいたが、「アルペジオは、ガタガタしていますね。もっと、たとえば、オイルで滑らかにするようなイメージで」とのこと。
●いま使っている楽譜|ハノンピアノ教本 全音ピアノライブラリー
ベートーベン:ピアノ・ソナタ第10番Op.14-2 第1楽章 ト長調 → 合格(4回レッスン後)
う~ん、ものすごくミスタッチが多くて、あちゃーって思いながら弾き終えたんだけどね。
合格にしてくださった。
あーあ、もっと練習して、もう少しいい状態に仕上げたかったな。
合格ではあるが、これまで何度もご指摘いただいたのに、まだ「ベートーベンらしい、メリハリのある強弱」ができていなかった。
それに、いちばん最後のところ。
「最後の一音」が、ちっともウマく弾けていなくて。
それ、ウチでわかっていたんだけどさ。「ここだけの地味な練習」ってのをサボッていたんだ。こういうのも、ちゃんと磨かないとねえ。
「ここはね、まるで『妖精が消える』かのようにね」と、先生は声をひそめて、そうおっしゃる。
妖精か。ああ、そうだよねえ。フッと、いなくなっちゃうんだね。寂しいなあ。
うまく妖精が消えるように、何度も弾いたけど、まあまあ。なかなか「フッといなくなる」ようにできなかったが、もう、この曲はマルになった。うれしいような、寂しいような。
さて、つぎの課題は、またベートーベンだった。ピアノ・ソナタ第5番Op.10-1。ひええ。
畏れ多い「ベートーベン」ばかりで、これまた、うれしいような、冷や汗が出るような。
しかもハ短調ですぜ。「借金で破綻」しそうな私にぴったりのハ短調だよ。
●いま使っている楽譜|春秋社版 ベートーヴェン集 1
バッハ:フランス組曲第4番 アルマンド → 3回目のレッスン
ええと、練習不足で。なんかずっと「ベートーベン優先」で、このところ「バッハ後回し」でいかんのう。
先生「悪くないんですが、ちっとも楽しくない。それに『湿っている』。『しっとり』と『湿っている』はちがいますよ」
それに、私は左手を「でん,でん,どす,どす」弾いてしまっており、先生は「そんなに『そして!』『そして!』ではなくて」
それで、お手本を弾いてくださったが、まあもう、まるであたたかい「木のぬくもり」のような、おだやかな響きで、なんかバッハに聴いてもらいたくなったよ。
●いま使っている楽譜|春秋社版 バッハ集 3
ツェルニー40番の14番 → 2回目のレッスン
「さいしょの一音」が、これまたヘタクソで、何度も直していただく。
あと、やたらめったら指が「転んで」おりまして。しかも自分では気づいていなかった。
「そこ、転がってます」「あ、また転んだ」「そこもほら」と、都度ご指摘。
で、最後のむずかしいところ。
私は「和音(オクターブや「ミ(2)-ド(5)」とか)を上から弾けない」ので、じゃあ、どういう動きが最適になるか、手首や指の位置をたいそうていねいに教えていただく。
先生「せっかく指が動くようになってきたんですから、さらにもっときれいに、最適な動きになるよう、この曲で学びましょう」
そうだなあ、もっとそうしたいな。
ツェルニーも、あまり練習できていなくて、この最後の部分も、とりあえず弾けたらええか、みたいにズボラかましていたんで、反省。
●いま使っている楽譜|ツェルニー40番練習曲 全音ピアノライブラリー
ああ、ベートーベン、また一曲、あらたにお迎えしちゃって、ドキドキ。
けどさ、私はもう、子どもじゃないんだから、もっと堂々としてもいいのか。
そうだな。このトシになったら、なに弾いたって「冥土のみやげ」だもんな。