ネットで見つけた「奇妙なメゾネット」、不動産屋に問い合わせると、まだ空室だった。
すぐに内見を申し込んで、翌日見に行った。
建物は大きな通りに面しており、クルマが引っ切りなしに通行してかなりうるさく、ピアノのためにはたいへん都合がいい。
その雑居ビルは、幅が非常に狭く、かなりみすぼらしい5階建て。
1階はお店なのだが、シャッターが下ろされている。
不動産屋のスタッフさんが、建物の鍵を開け、これまた狭苦しい階段を上っていくと、2階も3階も、店舗は入っていない。
つまり、この雑居ビル全体がまるまる空室の状態だ。
まあ、ちょっと気色わりい。
で、ふつうの住居として募集しているのが「4階+5階」の部分。
中に入ると、あらまあ、フルリフォームしてあって、すごくきれい。
上の5階にピアノを置き、下の4階に住める。
ワンフロア1室しかなく、両隣はデカいビル。
しかも1階から3階は空室。
だったら、最上階でグランドピアノを弾いても、まったく問題ない!
だが、それは大まちがいだった。
問題ないどころか、大問題があると判明する。
グランドピアノの搬入経路が「ない」のだ。
この雑居ビルは、ベランダがない。
そして、窓部分はどういうわけか、木製の細かい縦格子で全体がおおわれている。
上階にグランドピアノを搬入するには、ふつうクレーン車でピアノを吊り上げて、窓から入れる。
▼こんな感じ
出典 https://hikkoshi-guide01.com/turiage.html
しかし、このビルは窓が格子でふさがっているので、窓から入れられない。
建物の中にある狭い急階段は、シロウトが考えても、人の手で5階までグランドピアノを運び上げるのは不可能。
なにかいい方法はないか、スタッフさんも自店に電話してくれたり、私も調律師さんに訊いたりしてみたが、どうにもならない。
うおおっ! 外側の木枠さえなければ、入れられたのに!
その木枠なんて、ハゲハゲのボロボロで、ほんまぶっ壊したら、よほどかキレイになるし、ピアノも入るのに!
未練タラタラの雑居ビルだったが、次行こっ! 次っ!
すると「音出し可」の一戸建てが、ほう、見つかった。
しかも2軒も!